指の隙間から落ちていかないように、その表現を一つもこぼさないように。

日常の中の非日常を取り出すのが、お上手だなぁと思った。
絶妙な所を切り出して、ああ、と読者思わせるそのセンス。
言ってしまえばなんでもない、ただの生活の1ページだけど、ただの1ページなんかにさせない。
彼女たちの青春を、きらりと光らせている。
本当に、凄いという言葉しかでてこない。

これらを引き立たせてるのは、やはり繊細で、選び抜かれた言葉たちの表現だ。
砂のように粒が細かくて、手のひらでしっかり受け止めないと、通り抜けて言ってしまう。さらさらと、逃げて言ってしまう。
それらを受け止めようとするから、作品世界に引き込まれて、表現が体に馴染む。読了後の清々しくて甘酸っぱいそんな気分は、そうやって作られていくんだと思う。

表現が美しく、だけど地の文は重くない。会話だって、自然な言葉遣いとテンポ。
読まない理由なんてどこにあるんだろうか。是非一読して、読了後の満足感を味わってほしい。



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