後日譚だと思ったら前日譚だった件。ひたすらに彼らの幸せを願いたいです!

異世界転移から帰還後の話ということで
興味をひかれて読み始めました。

行方不明となっていたヒロインの美遊ちゃんが、30年の時を経て異世界から現実世界に帰還する。
異世界と現実世界の時空の歪みにより、同い年だったはずの従兄弟である主人公とは、親子のような年齢差に。
この時点でかなり心に来るものがあります。
さらには美遊は異世界でかなり過酷な状況下を生き抜いてきたようで、物語が進むにつれて、それらが徐々に明らかになっていくのですが……これも辛いもので、異世界転移したからって俺TUEEEEだと思ったら大間違いでした。(笑)


主人公とヒロインが、キャラクターとして機能しているだけでなく、ひとりの人間としてちゃんと生きていると感じました。
それゆえ、一筋縄ではいかない諸々の問題を乗り越えていく様には、思わず身を乗り出して「幸せになってくれ」と願いたくなりました。
もし世界のどこかに本作品のような異世界転移者たちがいたら、残された家族や周囲の人間に起こることは、本当にこんなふうなんじゃないか、と想像してしまうほどに、全てに説得力とリアリティがあります。
反面、脇を固めるキャラクターにはラブコメ色の強い属性持ちもいて、ともすればシリアス一辺倒に走りそうなストーリーに、絶妙なバランスで明るい魅力を添えています。

最後までバッドエンドにもグッドエンドにも転びそうな展開に、先が気になること間違いなしです。
読み進めるほどに、これが後日譚ではなく、二人の再生のための前日譚だったと気付かされる構成はお見事でした。
(あとがき読んでなるほどと思いました)

普段あんまりラブコメ読まないって方にも、
ちょっと異色のラブコメをお探しの方にもぜひ、おすすめの一作です!

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