永久不変に閉じ込めた「愛」の日々

同作者による『白百合の病』のスピンオフ。不治の病に侵された孫を見つめる老ピアノ教師の穏やかで切ないまなざしが全編を包み、『白百合の病』とは違った角度で主人公の少年・ミヨシ君像を浮き上がらせます。

雛鳥のような孫の姿を優しい祖父の目線で見つめる導入部の「間奏曲」。
曜日ごとに区切られた一週間の出来事に主人公の最後のきらめきを切り取った「前奏曲」。
そして「譚詩曲」では、さらに二人の生活を細やかに掘り下げた十年間を描きます。
さりげなくこだわった小道具を配した日常の風景も、心情を代弁するかのようなピアノ曲も、すべてが物語に素晴らしい効果をもたらし、個性的で優雅な筆致がこの透明感のある美しい物語を支えています。

少年のかたちをしたまま青年になったミヨシ君。彼が発する祖父への感謝と愛の言葉は、永久不変であり、彼もまた「幸せな男の子」だったのでしょう。
切なく、儚くも、強い想いに満ちた物語です。

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