幸せには、その「長さ」は関係がないのかもしれない。

幸せには、その「長さ」は関係がないのかもしれない。
そんなことを思いました。

この物語は、作者様の作品「白百合の病」のスピンオフに位置付けられる作品です。
主人公であるミヨシくんは、不治の病気である「白百合の病」を抱え、十歳の頃の発症から成長しない体のまま、歳を重ねます。
全身の関節が少しずつ変形し、痛みを増していく病状をただ受け入れ、死に向かって歩くしかないミヨシくんと、孫である彼を深く愛し、その人生に寄り添って歩くおじいちゃん。二人の道のりが、おじいちゃんの視点で描かれています。

病の苦しみと、刻々と迫ってくる死への恐怖に、人知れず悶え苦しむミヨシくん。それでも老齢の祖父にそんな自分を決して見せることのない彼の優しさに、胸が強く痛みます。

幸せには、その「長さ」は、関係がない。
濁りのない純粋な愛情に包まれた時間を永遠に留めておけるならば、それは紛れもなく、永遠の幸せ。
移り変わり、色を変えていく。そんな不可抗力の悲しみを永久に遠ざけた幸せ。
ミヨシくんも、おじいちゃんも、そんな幸せを手にしたのだと。
深い悲しみの後に、仄かに、そんな祈りにも似た思いが胸に残ります。

美しいピアノの調べが、物語の中に絶え間なく流れ続けます。それは時に悲しく、時に強い痛みを伴い——やがて穏やかに。

危うく透明で、それでも決して壊れることのない「大切なもの」。
それをはっきりと見たような深い余韻の残る、大変美しい物語です。

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