透明な、澄んだ空気に浮かぶ。愛しいものたちへの思いが続いていく。

作者の別作品「白百合の病」のスピンオフ作品です。
「白百合の病」の患者・ミヨシくんの祖父にあたる、ピアノの先生の視点で物語が進んでいきます。

ミヨシくんと先生。
家族の絆だけでなく、ピアノの教師と生徒という立場でも繋がれた二人の会話は、やはりピアノの、音楽の話がとても多く。
文字の流れ、時間の経過が、作中に登場するピアノ曲に沿って進んでいくようです。

悲痛な嘆きではなく、ピアノの音に表現される揺らめきが、二人の空気を形作っています。
ピアノの音が好きな方なら、間違いなく美しい言葉が流れるこの作品に入り込んでしまうはずです。

いつまでも、二人の人生という名の揺らめきを感じていたい。
澄んだ気持ちに浸らせてくれる、文学的であると同時にとても音楽的な作品です。

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