この剣は誰のために。騎士を目指す少女の成長と葛藤を描く、王道英雄譚。

 独学ながらも剣の才能にあふれ、けれど魔法は不得意で、ちょっと天然なところもある、男爵令嬢・ラーソルバール。
 彼女が騎士を目指し、王国立騎士学校を受験するところから物語は始まります。
 非常に長い連載ではありますが、丁寧に堅実に積みあげられており、文章も安定していて読みやすいです。一人の主人公にスポットを当てた英雄譚として、じっくり楽しめる作品になっていると感じました。

 主人公のラーソルバールは、強く、賢く、美人。ですが、内面は思慮深くて優しく、少女らしいふわっとしたところもある魅力的な女性です。そんな彼女の周りには、同年代の学友だけでなく、領地の民や貴族社会での交流相手など、様々な人々が集まってきます。
 誰からも愛され(時には激しいライバル心を向けられ)、敬われ、それでも彼女は自分の能力におごることなく、謙虚な心で人々と真摯に向き合っていくのです。騎士の鑑のような彼女が本当の英雄になる時には、どんな活躍を見せてくれるのだろう……と期待が膨らみます。

 丁寧に構築された背景世界でうごめくのは、陰謀か難題か……。
 昔ながらの王道ファンタジーが好きな方にも、格好いい女性騎士の活躍を楽しみたい方にも、この物語は刺さることでしょう。是非、ご一読ください。

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