歌手でいうと、艶のある声質で声量があって、声域も広くて、
当然のごとくピッチが狂ったりもしない。
そういう歌い手が、十八番を歌っているかのような文章で綴られた、
とても魅力的な小品です。
※「小品」とは単にサイズの話であって、「大作」の対義語ではありません。
ふたりの女性が「ある種の対決」をする8000字弱の物語ですが、
その短いなかにも読む者の予想を裏切る仕掛け(のようなもの)がふんだんで
つまりは「読む悦び」を存分に味わえる――そんな作品です。
細かく書いてしまうとネタバレになるので避けますが、
ふたりの女性の造形と対比、過去の因縁、現在の状況、場面の構築と描写、
そういう隅々まで行き届いていて、そしてみずみずしい。
(それはもちろん作者の執筆へのこだわりでしょうけれど)
えー、つまり何が言いたいかというとですね、
「読んでいて楽しかった」ということです。
たった6行前に書いたことを思いっ切り重複してますが、
そこは見なかったことにしてください(笑)
街中で、偶然声をかけられた。
中学の時の同級生だった。それも、大嫌いだった……。再会してしまった時には、そうキッパリと突きつけるつもりだった。
そんな嫌っていた同級生が、主人公にお願いがあると言う。
その誘いを断ることもできず、大嫌い……と突きつけることもできず、同級生とともにやってきたのは、小さな喫茶店だった。
その喫茶店を手伝ってほしいと言うのが、同級生のお願いで、パートナーと別れてしまったからというのが理由だった。
ここまで、ドラマは淡々と進んでいくが、ここから先の展開がおもしろい。
大嫌いになってしまった理由とは? その本当の意味とは? 十三年経った今、変わることができたのか?
それらをすべて、この物語のタイトルが表してくれているのかもしれない。
スイート・ライムジュース………、それは、甘いのか、酸っぱいのか?