四丁目 幼女の川流れ
あたしはとっても元気。
いつも元気だから、お母さんとかには結構、うるさいって言われることが多いの。
でも、町がこんなにも荒れ果ててしまったからさあ大変。
あたしはどうしても町を救いたかったから、色々調べてなんとあることに気が付いたの。
なんでも、十三人の女の子がなんだか生贄になっていて、その中にいる巫女と入れ替わることでお願いを一つ叶えてもらえるらしいの。
もちろん、それが本当だっていう確認なんてない。でも、あたしは町のことが大好きだし、お母さんのことも生き返らせてあげたいから、なんとか頑張る。
あたし、絶対に頑張るんだから。
それからというもの、あたしはできる限りその十三人の女の子を殺そうと必死になった。誰がその該当する女の子なのかが分からないから途中から、結構殺しすぎた感はあったけれど。
しょうがないと思う。
あたし、そういう時に見境なくやれるからお母さんからも好かれていたし。
お姉ちゃんとか、その上のお姉ちゃんもそういうところがよく分かっていないから、家から追い出されたのだ。可愛がられたのはあたしだけ。
賢いとは、自分でも思う。
あたしは幸せになれるタイプの女の子だ。
十三人の生贄になった女の子たちとは全然違うあたし。
ああいうハズレの人生を引くようなのとは全然違うから。
あたし、違うから。
巫女を殺して良い子になろうとした。
なのに。
「知らないんすか、先輩。先輩も生贄の中の一人っすよ。」
あたしは。
あたしは生贄だった。
「は。だって、あの儀式が始まった時に、あたし生まれてないもん。」
「あれなんすよ、あの儀式って、別に生まれてない子も生贄にできるんすよ。人柱の予約みたいなもんで、次に産む子をもう儀式用にするってことにしておいて、人数が揃ってなくても先に進められるんすよ。だから、逆に言えば、人数が揃わなかったから、子供を産むみたいなこともあるから。まあ、先輩のとこがそうなのかは分からないんすけど。でも、大丈夫っすよ、先輩はいっつも愛されてるって言ってるじゃないっすか。自信ないんすか。」
そのすぐ後だろう。
脳を使って高尚な思考を巡らせることもなく。
あたしは後輩を殺した。
引き金を引いたのだ。
この十三人の女の子を人柱にする。
この時間が本格的に動き始めてから、それを目的とした殺しを二度行った。
敵と身内。
あたしは自分の願いもよく分からなくなっていた。
少ししてから、自分の家に火を付けてそれから自分で自分の目をスプーンで抉った。
お母さんがよく使っていたスプーンで死のうかと思った。
それなのに、死ねはしなかった。
失明はしたけれど、自分が生きているという感覚はある。
そのまま動かないようにした。
失血で死ぬ、という願いを込めた。
でも、確か死ぬまでには相当時間がかかるだろうし、手の中にある銃をこめかみに当てた方が結論が早くでることは明白だ。
元々、過疎化を止めるために動き出したこの物語は、静かにそして確実にその区切られた空間内での人口を減らす方向で動いている。
つまり。
そう。
そういうことだったんだ。
これは、過疎化を止めるための儀式なんかじゃない。
本当の目的は。
「十三人の幼女を殺すことが俺の仕事の目的だ。」
男の声だった。
あたしは、少しだけ泣いて。
それから
舌を噛みちぎろうと歯食い込ませる。
この男の存在が、もうこの男がこの儀式の意味を理解しているということに繋がっている。
本当に。
「幼女様様だよ。まったくな。」
話の分かる男だと思う。
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