誰かと自分のつらさを比べることに意味があるのだろうか?

もしも自分がつらくてたまらなくて誰かに相談したときに、「○○さんはもっとつらいのだから我慢しなさい」と言われたら、どのような気持ちになるでしょうか。
このお話の主人公は、いじめにあっている地獄の中で担任教師に救いを求めますが、返ってきたのは無慈悲な言葉でした。
心を閉ざし、モヤモヤしたものを抱えてしまう主人公。大人になった彼女が、その担任と再会したときにとった行動は――。

リアルな心情描写で、読んだ人の心に深く何かを残す短編です。読むうちにモヤモヤとした感情はわきおこりますが、決して胸糞の悪い結末ではありません。自分は救いを見出しました。
担任の言葉は無自覚に残酷ですが、彼女もことさら残虐非道な人間なわけではありません。普通の人間です。どこにでもいる、少々他人の気持ちに鈍感で押しつけがましい人……程度でしょうか。
だからこそ、とてもリアルな光景に感じました。そして自分も「己に酔った正義感」で誰かを傷つけていないか不安になりました。

「日本の子供はアフリカの子供より幸せだ」という言葉に納得できない方に、誰かと自分を比較をされて悲しくなったことのある方に、大人からの言葉に傷ついたことのあるかつての子供に、このお話をお勧めしたいです。

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