『めでたし、めでたし』

「──こうしてアレンドの差別や争いは、世界ごと消えてなくなったのでした。めでたしめでたし!」


 私がそう締めくくると、愛しい私たちの娘はくすくすと笑いながら「たのしかったぁ!」と無邪気にはしゃぐ。

 これが空想の物語ではなく、実の父親ゲーティアが亡くなった実話だとも知らずに。

 もっとも、彼の名は出さずに話したからわからないのも無理はないけれど。


「ブラン。このお話を聞いてどう思った? ──人間は愚かしいと思わない?」

「オカロシ……?」

「悪くて怖ーいってこと!」


 愛娘はゲーティアと同じ星空の瞳を丸くして思案する。……ああ、なんて愛おしい!


「わたしはそうはおもわないかなぁ」

「……どうして? 何も悪くない神様を殺して、世界を滅ぼしてしまったのよ?」

「うーん、だってね、ゆうしゃさんも、おともだちも、おんなのこも、ころされちゃった神さまも、きっと見てるものがちがっただけで、みんなそれぞれ大切なひとにしあわせになってほしかっただけだとおもうの。みんななかよしってむずかしいのね」


 みんな仲良くできるといいのにな、と悩む表情は、人間が平和に暮らせる世界のためにいつも悩んでいたあの人にそっくりで。


「──そう。やっぱりあなたはあの人ゲーティアの子ね」


 愛おしくて、寂しくて。

 胸の奥が締め付けられるのを感じた。

 

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