しあわせのフィーネ

ねる

『さぁ、お伽話をはじめましょう』

──愚かしい。


 人間はなんと浅慮なものか。


──忌まわしい。


 人間はなんと勝手なものか。


──汚らわしい。


 人間はなんと穢れたものか。


「人間なんて全て滅んでしまえばいいの……」

「ママ?」

 うっかり口から零れた呪いの言葉に、私のかわいい愛娘が心配そうに顔を覗き込んできた。あの人によく似た夜空色の瞳。


「ふふ、なんでもないわブラン。私の可愛いブランネージュ、私とあの人の大事な子ども……」

 

 愛しいその名を呼んで彼女の小さな身体を抱きしめる。


「そうだ、今日はブランにおとぎ話をしてあげましょう」

「おとぎばなし!? だいすきっ!」


 私はその頭をそっと撫で、彼女のためにジャム入りクッキーと甘いミルクティーを出してあげた。


「じゃあ始めるわね。昔々あるところに──、」


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