第10話 あめのくに

「終点、雨の国~、雨の国です。ご乗車ありがとうございました。お忘れ物のないようご注意ください。出口の傘はご自由にお持ちください」


 気づくと僕とりょうさんは傘をさして立っていた。雨が降っている。


 どうやらコンクリートで舗装された小道が延々と続く、街のようなところに着いたらしい。今いるのは階段の一番上だ。


「じゃあとりあえず下行ってみます?」


僕は一歩踏み出した。と、足が滑って思わず落ちそうになる。


「危ない!!」


りょうさんが手を掴んでくれなければ確実に落っこちていた。


「危な......ありがとうございます」


 しかしりょうさんは黙っている。顔が真っ白だ。目が大きく見開かれているけれど、その目はどこを見ているわけでもない。僕は急に不安になった。


「りょうさん......?」

「純、俺帰らなあかんわ」


 唐突にりょうさんが言った。


「え」


 僕は息が詰まった。やっと絞り出した声はたぶんかすれていたと思う。


「ど......ういうことですか」


 僕は混乱した。どこに、どうやって帰るというのだろうか。そもそも探し物はまだ見つかっていない。


「大丈夫、純もすぐ帰れるから」


 僕の目をまっすぐ見つめて励ますように頭を撫でる。瞬きした次の瞬間、りょうさんの姿は跡形もなくなっていた。



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