第10話 あめのくに
「終点、雨の国~、雨の国です。ご乗車ありがとうございました。お忘れ物のないようご注意ください。出口の傘はご自由にお持ちください」
気づくと僕とりょうさんは傘をさして立っていた。雨が降っている。
どうやらコンクリートで舗装された小道が延々と続く、街のようなところに着いたらしい。今いるのは階段の一番上だ。
「じゃあとりあえず下行ってみます?」
僕は一歩踏み出した。と、足が滑って思わず落ちそうになる。
「危ない!!」
りょうさんが手を掴んでくれなければ確実に落っこちていた。
「危な......ありがとうございます」
しかしりょうさんは黙っている。顔が真っ白だ。目が大きく見開かれているけれど、その目はどこを見ているわけでもない。僕は急に不安になった。
「りょうさん......?」
「純、俺帰らなあかんわ」
唐突にりょうさんが言った。
「え」
僕は息が詰まった。やっと絞り出した声はたぶんかすれていたと思う。
「ど......ういうことですか」
僕は混乱した。どこに、どうやって帰るというのだろうか。そもそも探し物はまだ見つかっていない。
「大丈夫、純もすぐ帰れるから」
僕の目をまっすぐ見つめて励ますように頭を撫でる。瞬きした次の瞬間、りょうさんの姿は跡形もなくなっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます