第12話 再会

 目を覚ますとそこは蔵の中だった。僕は一人で埃っぽい蔵の中に倒れていた。床がひんやりして気持ちいい。僕はゆっくりと起き上がった。りょうさんはまだ病院にいるはずだ。病院の名前も思い出した今、するべきことはひとつだ。


 蔵を出ると、僕は走り出していた。一面の田んぼの中を走る。


 汗が目に入って痛い。車の方が早かったな、これじゃまるで青春映画のラストシーンじゃないか、なんて思いながら走る。


 舗装されていない道はでこぼこして脚が痛い。脇腹も痛い。でも、今は何より早く病院に着きたかった。


 個室に入ると中でりょうさんが眠っていた。どうやら呼吸は自力でできているらしい。すやすやと眠っているのを見るとまた涙がこぼれそうになる。りょうさんがここで寝ているのは僕のせいだ。


「りょうさん、起きてください。僕も帰ってきました」


って言ってもそう簡単には起きないか......と思ったとき、りょうさんがうっすらと目を開けた。


「......」


何か話そうとするが声にならない。僕はりょうさんの口元に耳を近づけた。


「......おか......え......り」


にやりと笑うりょうさん。


「りょうさんも、おかえりなさい」


僕は無理やり笑おうとしたが、うまくいかずに泣いてしまった。


「りょうさん、ごめんなさい......あのとき僕がゆっくり降りていれば、」

「いや......純が..生きてて...よかっ...たで...涙ふきや...ほら...」

「それ、りょうさんの布団じゃないですか......もう...」


僕は思い切り鼻水と涙をすすって、それからふたりで笑った。




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