第8話 『調べ物のすすめ』

 起きるとりょうさんはいなかった。机の上の書置きを見るに、図書館エリアに行ったようだ。冷蔵庫のジュースを飲むと、僕は部屋を出た。


 図書館エリアは広大だった。見渡す限り本棚が並んでいる上に、一階部分から吹き抜けになって二階以上の部分が続いている。一体何階建てなんだろうか。外から見たときは二階建てくらいに見えたのだが。


 「探し物」のコーナーにたどり着くと、りょうさんが先に来ていた。一人掛けのソファーに座って真剣な顔で本を読んでいて、横の机には何冊か本が積まれている。


 僕ら以外に誰かいるのは見かけなかったけれど、何となく小さな声で話しかける。

「りょうさん、何か見つかりました?」

「あ、純やん。昨日は部屋まで連れてってくれてありがとう。で、調べ物なんやけど、ちょっと見てこれ」

「あ、いえ、全然大丈夫ですよ。この本ですか?」


僕は一冊だけ分けて置いてある本を手に取った。


「そうそう、その本なんやけど......表紙には『探し物のすすめ』って書いてあるのに中まっしろやねん」

「えぇ......そんなことあります?」

「まぁ見てみてよ」


 本はずっしりと重く、深い緑色のカバーで包まれている。手触りからしておそらく革製。金色でタイトルが箔押しされている。ひっくり返してみるとバーコードはおろか値段の記載もなかった。


 中を開くと確かに真っ白だった。印刷ミスの域を超えている。


「変ですね」

「やろ?この本の謎を解いたらなんか分かる気がして持ってきてもたわ」

「でもこんだけ真っ白じゃ何にも分からないですね......せめてヒントがあれば......」

ぱらぱらとページをめくっていると、手が滑って思わず本を落としそうになる。


「あ」


僕とりょうさんは同時に本を掴んだ。


「っと......セーフ!!ナイスキャッチすぎやろ俺」

「いや僕......あれ?見てくださいこれ」


 二人で掴んでいる本の真っ白なページに、青い文字が浮かび上がってきた。まるで見えない誰かが書いているようだ。


『つ ぎ は あ め の く に』



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