+10kg キャンプde朝ご飯


 目覚めると、俺はテントの中にいた。

 朝日がテントの中を照らしている。


「ここは……どこだ」

 俺の部屋じゃなくて軽く混乱している。


 あれ……俺、なにしていたんだっけ。

 なんで俺はこんなところにいるんだっけ?

 …………思い……出したッ!


 昨日からキャンプに来ていた俺たちは、ジンギスカンをたらふく食べ、星を見て、そして、美帆と……。


 顔が熱くなる。

 重なりそうだった唇が、熱を帯びていく。


「そういえば、美帆は?」

 テントの中には俺しかいない。美帆と千咲がいるはずなのに、ふたりはいなかった。


 テントの中は蒸していた。テントから出るとそこは森の中。風が吹いて、火照った体を冷ました。


 緑の匂いがする〜。

 川のせせらぎが聞こえるぅ~。

 涼しい~。


 と思ったら寒ッ!


 テントの中はビニールハウスみたいになって熱かったけど、山の朝はめっちゃ冷える。歯がカチカチしちゃうレベルで寒い。


「あ、コウくんおはよう。もうすぐ朝ご飯にするからね~座ってて」


 美帆はたき火の上にフライパンを置いて、フライパンを温めている。


「あ、お兄ちゃんおはよ~」


 千咲はたき火のそばでブランケットにくるまって、マグカップをすすっている。


「はぁ~キャンプさいこぉ~♡」


 めちゃめちゃ幸せそうだ。


 たき火の前に置かれたキャンピングチェアに座ると、じわりと足下が暖かくなった。脳まで溶けそうだ。


 はわぁあああああ♡

 あったかぁああああい♡


「美帆~、朝ご飯なに~?」

「おみそ汁と、目玉焼きと、ウィンナー」

「いつもの定番メニューじゃん」

「お外で食べる定番メニューもおいしいんだぞ♡」

「まあ昨日のジンギスカンが胃に残ってるから、それくらいがいいや」

「まあまあ、そう言わずたくさん食べて♡」


 美帆は軽く微笑んで、あたたまったフライパンにサラダ油を投入。

 そこに片手で割ったたまごを投入していく。


 ジュワ~、ジュワ~、ジュワ~、とたまごが投入されるたびに油のはねるいい音がする。直火の超火力にすぐに白身が焼けていく。


 うまそぉおお~♡

 たまごの横にウインナーも投入される♡


 いかんいかんいかん。冷静になれぇぇぇぇ。俺はキャンプに来てまでデブ活してどうするんだ。昨日はジンギスカンをバカみたいに食べたばかりじゃないか!

 適正量。適正量。適正量。適正量。適正量。適正量……。


「千咲、目玉焼きはお塩がいい~」

「はっ、千咲はなにもわかていないなあ~。目玉焼きといえば醤油、コレ一択」

「お兄ちゃんこそなに言ってるの。たまごに余分な味付けはしない。これが正義。正義のお塩なのよ!」


 俺と千咲がバチバチやっていると美帆のヤツが、

「今日は私のおすすめのウスターソースにさせてもらおっかな」

「「ウスター!?」」

 声がかぶる水上兄妹俺と千咲


「ないないない。それ、たまごの味がかき消されて、それほぼソースの味しかしないじゃん」


 煽る千咲。


「目玉焼きには醤油は絶対原則。醤油独特な香りが食欲をそそるんだ~!」


 俺は絶対的に醤油支持派なのだが、美帆は無視して、プライパンにウスターソースを回しかけた。


 ジュゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!


 ソースのにおいがあたりを充満。


「ちくしょう……うまそうなにおいを漂わせやがって……」

「お兄ちゃん、千咲こわいよぉ……これは暴力……だよ……」


 香りの絶対暴力に口の中がよだれまみれになって、ぐぅっと腹が鳴った。


「はい。まずはおみそ汁どうぞ」


 美帆はキャンプ用の椀(クッカー)にみそ汁を入れて俺に渡してきた。


 ずずっとひとくち。


「…………」


 アハァああああああああああ♡♡♡♡♡♡アハァああああったかぁああああい♡♡♡

 

 あたたかいみそ汁が冷えた体に染み入るわけぇええ。


 最高のアハァ体験にからだはびっくんびっくんと熱を持つ。


 やばい……軽くみそ汁を啜っただけで、胃に残った昨日のジンギスがゼロリセットされてしまった。今なら、いくらでも……食える。食えてしまう。


「このなめこのつるっとした食感がまた……ごはん! ごはんが食べたいぞ!」


「はいはい。飯ごうで炊いたごはんだよ♡」


 美帆がごはんをよそってくれて、俺は受取るなり米をかっこんだ!


 うぉおおお! 昨日も食べたけどおこげができたごはんうまぁあああああああああああ!


 おこげ部分を口に放り込んで、それをみそ汁で流し込む。


 おこげがカリッとして、

 なめこがツルッとして、

 みそ汁でホッとするわけ。


 カリッ、ツルッ、ホッの三重奏が俺を最高の快楽につれていく。


 米とみそ汁だけでこんなに幸せ。


「日本に生まれてよかったよぉ……」


「コウくんなに泣いてるの? それより目玉焼きとウィンナーさんも食べてほしいな。はい。ごはんのおかわりだよ!」


 ウスターソースで味付けされた目玉焼きの白身部分をごはんに乗っけて、はぐっとほおばる……と。


 ウスター目玉焼きうまぁ。


「……あれ……おいしい」


 千咲がとなりでぼそっとつぶやいた


 うまいうまい! これはうまい! 


 これはごはんが止まらない。ごはん・たまご・ごはん・たまごと交互に口に放り込んで、ごっぎゅんと飲み込む。


「焦げたウスターソースが食欲をそそるぅううううう!」


 うまい!

 ウスターうまい!

 これはうまい!


 直火の高火力で焼けたソースが目玉焼き全体をいぶしているというか、酸味とうまみがよく絡んで、米と食うために最ッ高の濃い味に仕上がっている!


 2杯目というのに米をかっこむ速度は上がっている!


「ふふ。自然の中で食べる朝ご飯ってよくない?」


 美帆が微笑んでくる。


 その微笑みは確実に俺を太らせにきている魔性の笑みだ。


 気がつけばもう2杯目のごはんを平らげている。


「はい! おかわりだよ!」


 目玉焼きの半熟黄身は残しておいて、次はウィンナーを堪能!

 がぶりと頬張ると、パリッと歯切れいい音のあとジュワッと肉汁が口の中を満たす。


 ん~~~~~♡♡♡♡

 ごはんとウィンナの相性抜群ッ!


 3杯目というのに、米をかっこむ勢いは変わらない。すぐ次のおかわりを求めてしまう。


「はい。おかわりだよ!」


 わんこそばのような勢いで米を食らう俺氏。


 やめられないとまらない♡

 ごはん~っておいしいッ♡


「お兄ちゃん食べ過ぎだよ! また太って筋肉が隠れちゃうよ!」


「止めるな千咲よ! 俺はこの目玉焼きの黄身をごはんに乗っけて、とろっとした黄身を絡ませてかっこむんだ!」


「ダメだよダメなんだよ! 太っちゃうよ! 太っちゃうよ!?」


「マァーベラァアアアアアアアアアアアアアアアアアス!!」

 ※marvelus:驚くべきさまの意。このときの俺は『ええい、うるさい!』という意味と勘違いしていた。


「マァーベラァアアス!! マァーベラァアアス!! マァーベラァアアアアアアアアアアアアアアアアアス!!」


 俺はキャンピングチェアから降りて、中腰を下ろす。


「なら俺は筋トレしながら食う! 空気椅子で食えばいいんじゃろがぁああああああい!」


「アハァ……お兄ちゃんの大腿四頭筋が酷使されてるぅうう♡♡♡♡♡♡」


 千咲は黙らせたッ!

 俺はこれから食らうだけッ!


「はい。焼いた明太子も召し上がれ♡」


 あぁ……明太子とか、ごはん食べる為にできた食べ物……こんなんうまいに決まってんじゃん。


 空を仰ぐ。

 葉擦れの音と、木漏れ日。

 大自然のパワーが俺に注ぐ。

 大地ガイアが俺の胃を無限インフィニティに……まてまて今、俺のテンションすげえ。

 

「はい。おかわりだよ!」


 目玉焼きの黄身をライスにオンして、黄身を崩してとろっとさせる。もはや俺の理性もとろっとろ。


 もうこれ米食べる為に生まれた料理だろ!

 ウスター味がこれまた黄身と相性抜群ッ☆


 かっこむ、かっこむ、米をかっこむ!

 かっこむ加速度は上がる一方。

 咀嚼する前に飲むがごとし。

 なにこれごはんが口の中で溶けていくよぉ……♡


 ……未来が見えた。

 見えたんだ。


 タピオカの次はライスが流行っている。

 そんな未来。


 みんな極太ストローでおかゆを吸うんだ。

 ちなみにこれ俺のYOGEN☆!



 俺が見つけたひとつの真理!



 ご は ん は 飲 み も の !



 キャンプ朝ご飯うまぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!



「はい。おかわりだよ!」

「はい。おかわりだよ!」

「はい。おかわりだよ!」

「はい。おかわりだよ!」

 







 今日もめっちゃ食いました。









 =本日の摂取カロリー=


 なめこのみそ汁 44kcal


 目玉焼きとウィンナー 572kcal


 焼き明太子 126kcal


 大量のごはん 2,520kcal


 合計 3,262kcal(≒ Rice is NO☆MI☆MO☆NO!)

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