女神を継承した少女が見た混沌の世界

ギリシア神話を題材にとり、筆者が独自の視点で描いたオリジナリティあふれるファンタジー。でも神話に通じていなくてもその展開の面白さに思わずページを繰りたくなるでしょう。

女神アテネを継承する人間の少女エストリーゼ。人間の心──恐れ、悩み、苦しみに満ちた心──を持ち続けながらも自分の運命を受け入れ前に進む主人公の変貌がよく描き出されています。ひとつの成長物語といってもよいかもしれません。

登場人物(神々)も個性的です。なかでも特筆すべきは太陽神アポロンのキャラクター。美しく力にあふれながらも非常に複雑な人間(神様)性を持ったアポロンがこのお話をさらに魅力的にしています。

ミステリー仕掛けの構成も巧みに読者を引っ張り、後半の種明かしにかけてのストーリー展開にはダイナミックな勢いがあります。

綿密な描写で主人公が直面する混沌の世界を描きながら、その先へとつながる未来も予感させる物語。
壮大な一編の詩を読むような感触を覚えるダークファンタジーです。

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