緋色の王様、あなたの本当の願いはなあに?

「人々の願い」が魔法の力になる世界。王都と壁で隔てられたスラムに暮らす緋色の王様は、子どもたちを集めて「神様」にある願い事をしようとします。
その裏にあるのは、彼の過去にまつわる悲しい愛と憎しみの記憶でした――。

とてもキャラクターを大切にされていて、その心を丁寧に描くことに定評のある作家様です。愛すべきキャラクターたちの心と心の交差する模様、そこに生まれる悲喜交々のドラマが大変魅力的です。
もっと簡単な言葉で言えば、「キャラとそのキャラ同士の関係性にめっちゃ萌える!」です。
多くのウェブ小説の読者様が、ファンタジー小説に求めるものではないでしょうか。魅力的なキャラに感情移入したい、彼らの関係性にドキドキしたいと。
それを存分に楽しませてくれるのが、何よりのこの作品の魅力であると感じました。

個人的には、複数の立場の違う登場人物たちが登場すると、誰がどの立場で何をしようとしているのかすぐに混乱してしまうので、壮大な群像劇を読むのが苦手なのですが、この小説は楽しめました。
ちょうどよい情報量を適度に提供してくれるので、物語についていけなくなることはありませんでした。

あまり語るとネタバレになってしまいますが、キャラクターの心が変化し、成長していく姿が魅力的でした。
私は、王様に様々な感情を抱きながらも付き従うニック、そして、ブラッディとランの関係が好きです。最初の印象とだいぶん変わっていく○○や、たくましく成長した○○○も素敵だなあと思いました(ネタバレのため伏字です)

描かれているのは綺麗なばかりではいられない厳しい世界です。妬み、殺意、憎悪も存在します。
主要人物は、誰かを思う心を持った人たちです。深く愛するがために、傷も深い。
その旅の果てに、彼らは何を選択するのか。
葛藤しながらも前へ進む彼らの姿は、読んだ人の心の中に何かを残してくれると思います。

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