短くまとめられた話の中で、主人公である武本の思いは、決して細かく描写されているわけではありません。ですが、彼の人となり、歩んできた人生、死にゆく馬に対する思いまで――馬を通して、じわりと読者に感じさせてくれます。芳醇なウイスキーにも似た余韻深さや味わい深さは、なかなかWeb小説ではお目にかかれるものではありません。静かな夜に、じっくり読みたい短編……皆様も、ぜひ一度味わってみてください。
様々な意味で悪魔と呼ばれた馬を乗りこなした、というよりは乗りこなすのを馬自身に許された騎手の視点から描く悪魔の最期。 多少は競馬で遊んだ人間として、出走出来なくなった馬の運命は知らないわけではない。その点、本作の馬は公平に見てまだしも幸運な方だとは思う。同時に、騎手のシビアな人生にも間接的に触れている。 北海道の恐ろしい季候を背景に、かつては悪魔と恐れられ愛されたその馬の心を巡ったのはなんだろう。 私としては、少年の手になるそれが回答だと信じたい。 簡潔で引き締まった文章で綴られた名作である。
悪魔と呼ばれた一頭の馬の物語。短い話なので読みやすく、読了後は少し心動かされる。
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