「ボトムズ」それは底辺ではなく、命の深淵へと導かれる物語。

「ボトムズ」とは、底辺を意味します。
主人公の桜は、荒廃した世界の底辺と位置付けられる生活と職業に従事しています。
それは、スライムを狩ること。
どこか諦め、それでも死を選べずに生きているだけの青年は、ナミと言う女性と出会うことで暗く湿った世界に、変化を感じるようになります。

生き残った人類が敷いたヒエラルキー。
人類の驚異であるスライム。
先が見えない世界を進む物語は、やがてスライムが生まれた意味。
桜に絡む必然とも言える不条理。
選ばれてしまったナミ。

全ては、命を問う原初の水底へと導かれる。

一般の日常から、世界の可能性と傲慢に触れた非日常へ案内される物語は、
最初から最後まで好奇心をくすぐられ、作者様が指し示す命の根源と、どこか俯瞰的でシニカル。
一つの考察として楽しめます。

読者によっては、専門的なワードに戸惑うかもしれませんが、
作者様の解釈による世界観の咀嚼によって、とても分かりやすく物語のスパイスとして味わえるはずです。

作者様は他作品の中でも、それぞれの命の形とその果てを描いていらしゃいます。
作品それぞれが独立し、考え方や解釈は一つではないと、作者様は我々の想像力を高めてくださいます。

桜とナミの命の旅路を、そっと覗いてみませんか?

最後になりましたが、
まさか、桜雪様がご覧になった夢がきっかけで、この素晴らしい物語と出会えるとは。
ファンとしては嬉しい限りです。
夢の一片だったはずの「ボトムズ」を、作品として仕上げくださって本当にありがとうございました。