ボトムズ

作者 桜雪

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★★★ Excellent!!!

「ボトムズ」とは、底辺を意味します。
主人公の桜は、荒廃した世界の底辺と位置付けられる生活と職業に従事しています。
それは、スライムを狩ること。
どこか諦め、それでも死を選べずに生きているだけの青年は、ナミと言う女性と出会うことで暗く湿った世界に、変化を感じるようになります。

生き残った人類が敷いたヒエラルキー。
人類の驚異であるスライム。
先が見えない世界を進む物語は、やがてスライムが生まれた意味。
桜に絡む必然とも言える不条理。
選ばれてしまったナミ。

全ては、命を問う原初の水底へと導かれる。

一般の日常から、世界の可能性と傲慢に触れた非日常へ案内される物語は、
最初から最後まで好奇心をくすぐられ、作者様が指し示す命の根源と、どこか俯瞰的でシニカル。
一つの考察として楽しめます。

読者によっては、専門的なワードに戸惑うかもしれませんが、
作者様の解釈による世界観の咀嚼によって、とても分かりやすく物語のスパイスとして味わえるはずです。

作者様は他作品の中でも、それぞれの命の形とその果てを描いていらしゃいます。
作品それぞれが独立し、考え方や解釈は一つではないと、作者様は我々の想像力を高めてくださいます。

桜とナミの命の旅路を、そっと覗いてみませんか?

最後になりましたが、
まさか、桜雪様がご覧になった夢がきっかけで、この素晴らしい物語と出会えるとは。
ファンとしては嬉しい限りです。
夢の一片だったはずの「ボトムズ」を、作品として仕上げくださって本当にありがとうございました。






★★★ Excellent!!!

世界的には「人の命が恐ろしく軽く、血なまぐさくて退廃的な世界が前面に出ている」感じです。SFというよりも、私はあの「パラサイト・イヴ」的なホラーテイストを強く感じました。

と、前置きをした上で。

そういう世界観の作品って、(WEB小説でもあるにはあるのですが)なかなか見かけないなーと思っていました。でもこの「ボトムズ」の世界には、恐ろしく淡白に引き金を引いたり、焼き殺したり、ものすごく機械的に拷問したり……簡単に言えばサイコパス的(アニメじゃなくて)な人たちがうじゃうじゃ出てくるんですよね。特に主役・桜。彼の死んだ魚の目(たぶん)は、本気でゾクッとします。でも、主役・桜のそういった行動原理等々も「ああ、そういうことか」という理由が付けられるような展開になっています。詳しくはネタバレになるので割愛。

全体に感情を廃した淡白な描写が多く、客観的事実がどんどん蓄積・進行していって、最終的に一気呵成に一つの点に集約していく……というリズミカルな構成になっています。ストーリー的に王道とかテンプレとかそういうものからはかけ離れていると思うのですが、集約までの流れの作り方は巧みだなと感じました。


以下、個人的意見です-----
テーマがいくつかの太い枝に分岐しているため(と感じました)、30万文字くらいあったら不足はなかったかな、もっと良くなるかな……なんて印象があります。また、終盤は聖書関連の知識がないと、ちょっと理解が難しいかもというところが多々ありました。好きな人には無駄なく理解できる範囲でしたけども。でもそのせいでちょっと読者を選んでしまうかなーと思う次第です。

刺さる人を選びこそしますが、刺さる人にはガッツリ刺さると思います。