タチタチタチ……。そして降り注ぐ、銀杏の道。柊の世界には静寂があり、そこへ、ぽつりぽつりとエコーのように響くクローズアップされた音たちが生きづいている。文字になって揺れるようなその世界を体験するたびに、すこし、感性のお裾分けを貰った。そんな気持ちになれる幸せな短編。そして、この身の内にある静寂に浸る。
ラストはカズオ・イシグロのようなムード。読みながら、ふと、癌で亡くなった職場の後輩を思い出していましたよ。コンビを組んだこともある。葬儀に参列した別の後輩が婚約者だったと、上司が言っていた。後輩のやり残して仕事を引き継いで、業務完了にしました。
一話完結なので手軽に読めるなと開いたところ、琴線に触れる言葉がたくさんあって吃驚しました。そして最後まで読み進めると、そういうことか!とまたも驚かされることが。このままのショートでも勿論いいですが、ひとつひとつのエピソードを掘り下げた長編も読んでみたいですね。素敵な作品でした。
誰にとっても、時間は有限である。しかし主人公と彼にとっては、その時間の期限は短すぎた。短編であるが、四季折々の二人の様子が丁寧に織り込まれている。 例えば桜の散り始めに、その一枚を本の栞にしたこと。 夏の海と雨の日のこと。 秋の銀杏並木が立てた音。 冬に二人で作った雪だるま。 また季節が廻り、二人で桜の栞を探す。 そこで、二人の時間は――。 この二人ならば、有限の時間を、永遠に出来たはずだ。 そう感じずにはいられない。 是非、御一読下さい。
季節の描写、エピソードがとても綺麗です。回想シーンで、彼等の歩みが思い起こされ、悲しくなりました。1話なのに、中編を読みきった読後感がありました。タイトルが、彼がくれた「ありがとう」、ですがわたしは作者様にありがとうと言いたいです。皆様も、3分間をこれを読む3分間に使って下さい!
最初からああなる結末も多少なりとわかっていただろうに、とにかくやった。後悔はないのだろうか。あるいは、より満足する結果へ邁進するのだろうか。次は、味の良し悪しが分かるといいなと思う。
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