家族の死のショックを引きずる主人公「僕」。ヒロインさんも関係していてショックを引きずっている。就職して、下町情緒のある商店街を控えたマンションに越すと、親友の同僚ができ、ヒロインさんとも偶然再会。商店街の人々は「残念イケメン」な「僕」の思考回路をいじりだす。そして二人は成長する。
ヒロインさんが泥酔している「僕」の部屋に不法侵入、兔ちゃんを誘拐、自室に監禁していた下りは、あらあらと思っていたところ、後半の盛り上がりで、いい感じで読了できました。
ツンデレさんではなかったのでしょうけど、物語として「ヒロイン」さんは、こうなるのだろうなあと思いました。楽しめましたよ。
双子の弟を事故で失った主人公の男性は、その記憶に囚われながら生きていた。弟を見殺しにしかできたなかった主人公を、誰も責めてくれなかった。そのことが、余計に主人公を苦しめた。
そんな懺悔の日々の中で、主人公は一羽のウサギを飼っていた。しかしある日、そのウサギが脱走し、行方不明となる。良心の呵責に苛まれつつも、会社員として日々を送る。主人公の唯一の心の拠り所は、商店街の親しみやすい人々の存在だった。その商店街の中に、ポーランド雑貨の店主の女性がいた。
主人公は女好きで人たらしの同僚にペースを乱されながらも、この雑貨店の女性店主に惹かれていく。その女性のポニーテイルに、どこか見覚えがあった。
そして、思わぬところからのウサギが帰還し、女性との過去の接点を思い出し、主人公は命の重さについて考えるようになる。
しかしある日、ポーランド雑貨の店に彼女の姿がなかった。代わりにいたのは、女性の兄を名乗る男性で……。
静謐な雰囲気の中に、ひしひしと伝わる生きづらさ。
まるで主人公の胸の内を描写したかのような、明けきらぬ夜にいるような感覚で拝読しました。それとは対照的に、活気ある商店街の描写も、芯の通った女性の描き方も、見事としか言いようがない一作で、まさに眼福!
キャラクターはもちろん、それぞれを引き立たせる設定や場所、筆力、全てにおいてハイクオリティです。
拝読していなければ、損していました。
是非、是非、御一読下さい!