桜の花びらの栞は、まるで記憶のタイムカプセルのようだった。

 誰にとっても、時間は有限である。しかし主人公と彼にとっては、その時間の期限は短すぎた。短編であるが、四季折々の二人の様子が丁寧に織り込まれている。
 例えば桜の散り始めに、その一枚を本の栞にしたこと。
 夏の海と雨の日のこと。
 秋の銀杏並木が立てた音。
 冬に二人で作った雪だるま。
 また季節が廻り、二人で桜の栞を探す。
 そこで、二人の時間は――。
 
 この二人ならば、有限の時間を、永遠に出来たはずだ。
 そう感じずにはいられない。

 是非、御一読下さい。

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