ヒッピー姿の「僕」
ヒッピーは今いるのでしょうか。ベトナム戦争期のアメリカ青年、あるいは格好を模倣した日本の青年という印象があります。ヒッピーは山に入ってキャンプ生活をしていることがあり、そのころを描いたものか、『ワイルドイン』なんてアメリカ映画をふらりと立ち寄ったミニシアターで観たことがあります。また新聞のコラムだったかで、ヒッピーは、ヘッセの『車輪の下』を好むとありました。
そのため何年か前、気になって『車輪の下』を読みました。詩人になり損ねた少年が職工になり、自死を暗示させる酩酊して川に落ちて溺死するというカタルシスな結末。
個人的に、作品舞台は1990年から2000年の東京・下北沢かなあと想像しています。当作品を読んでいるとき、ヘッセを思い出していました。ラストがハッピーエンドで良かったと思いました。
若い頃に結婚して一女をもうけるも、結婚生活はすぐに終わってしまった。勤務していた書店からもクビを切られ、食事も仕事もままならず、痩せていた。
しかしそこで気づいたのは、痩せたなら若い頃に憧れたヒッピースタイルができると言うこと。そして、この街には風変りな人が多くいて、露天商も数多くいたことだ。
主人公はため込んでいた使っていない品々を引っ張り出し、服を着替えて露天商を始めた。そこに、一人の女性が本を引き取ってほしいとやってくる。主人公はその本を読み、感動を覚える。同じ作者の初版本。この著者は知らないが、一読してファンになっていた。
主人公は本を預けた女性に再会するのだが――。
短編なのに、ここまでの感動。
是非、御一読下さい。