斜めに見つつ、斜に構える
- ★★★ Excellent!!!
主人公を一言でいうならば、この相反する言葉が浮かんでしまいます。
斜めに見えるとは「ひねくれた見方をする」という意味になり、斜に構えるとは「真剣に取り組む」という意味になるので真逆なのですが、その矛盾が両立してしまうのが「人間」を書けている事の証明だ、と私は感じました。
一人称で綴られている主人公の心情は、どこか他者を小馬鹿にしたような態度に感じられる事が多く、だからこそ世の中を斜めに見ているように感じるのですが、しかし最終的に「だからしない」ではなく、行動を起こすところに、斜めに見つつ、斜に構えている、という矛盾を解消しているように感じるのです。
自己正当化のために斜めに見ているのではなく、素直な発露が斜めに見る事になっているからこそ、自分の生活に対して斜に構える事ができるのだ、と。
誇張や見栄のない等身大の人間が描かれているからこそ、良質な人間ドラマになっています。