『七十五点』の人が、一番心地よい人だったりするのかも知れません

ファストフード店のカウンターで「七十五点」の業務をこなす従業員のおおぬきさんと、なぜか彼女に惹かれてふらりとコーヒーを飲みに訪れる「私」の、ふれあいとも言えないほどの、小さな日常を描いています。どんな人かも知らない、ましてや腹を割って話すなんて間柄には絶対にならない、従業員と客という距離感が保たれたまま、それでも私は、日々のなかで小さな波が立つとき、ふいに彼女に会いたくなるのです。七十五点、この微妙な点数が、彼女と私の一番ここちよい距離とも取れました。何もかも吐露し合うだけが本当の人間関係じゃなく、さりげなくいつもそこに居る安心感というのでしょうか。全部もたせかけるのではなく、でもどこか拠りどころとしてしまう、繊細な居心地の良さ。慌ただしい日常で見落としそうな心の機微を丁寧に描いてある作品です。

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