本作は科挙試験を受ける男とそのライバルにまつわる物語です。科挙、同郷の友、「主人公を食べようとするものの存在」と、中島敦の傑作『山月記』を想起させる舞台設定に興味を惹かれて読み始めましたが、結末までしっかり楽しめました。クールな文体で、しかし思いの熱さを感じられるというのは良いものです。『山月記』は(途中で視点人物の変更はあるものの)どこまでも李徴子の物語ですが、本作はあくまで科挙試験を受ける男とそのライバル、二人の物語です。二人の物語であるからこそたどり着けた結末を是非是非堪能してください。
読み慣れないと、作中に出てくる言葉は少し難しい。昔から残る良作を読んでるかのような──ううん、違うか?教科書の漢文を、優秀な友人が私向けに砕けて分かりやすく少し色を付けて翻訳してくれたかのような。少し硬いかもしれない。でも、そんな事は気にならない。良作。特に、主人公が悟る部分。これはとても重要な観点。ネガティブな感情に、一つの解決策を教えてくれる。煮詰まった時に、改めてもう一度読んでみたい。
こういう話好きです。すごく真に迫っていてゾクッとしました。やはりこの作者の書くものはいい。
もっと見る