本作は科挙試験を受ける男とそのライバルにまつわる物語です。科挙、同郷の友、「主人公を食べようとするものの存在」と、中島敦の傑作『山月記』を想起させる舞台設定に興味を惹かれて読み始めましたが、結末までしっかり楽しめました。クールな文体で、しかし思いの熱さを感じられるというのは良いものです。
『山月記』は(途中で視点人物の変更はあるものの)どこまでも李徴子の物語ですが、本作はあくまで科挙試験を受ける男とそのライバル、二人の物語です。二人の物語であるからこそたどり着けた結末を是非是非堪能してください。