ガラス煌き血の薔薇が咲く、神秘と美醜入り混じるゴシックホラー

まず目につくのが知っているようで知らない、既視感を感じるようで全く異なる世界。
例えば「花と言われれば」と尋ねられれば、多くの人が思い浮かべるであろう赤い薔薇が一般的に存在せず、物語を動かす特別な花へと昇華しています。
代わりに別の色合いの薔薇が、様々な名前を付けられて作中の節々に登場しており、作中でも重要なキーワードとなっている。

また、日常の生活によくある退屈な光景を、独特の世界観を分かりやすく取り入れ、楽しいシーンへと昇華する作者の手腕が光ります。
15話の「手紙を運ぶ青い鳥」の話が特にレベルが高いです。是非見てほしい(こぶしを握る)


そしてその煌びやかで美しい舞台で踊る、魅力的なキャラクターたち。

まずはメインキャラクターのセス
薔薇の味しか分からず、薔薇でしか食欲を満たせない「魔女」たる主人公。青年魔女で白髪という時点でついていこうと決めました。
序盤の1話2話目の食事シーンにて、キャラの個性と性質をガッと書き込んで読者にセスというキャラ認知させる。
食事というものはキャラ性がとても出るのですが、ここまでキャラを印象付けられるのは設定の良さと作者の描写力のたまものだと思います。
強さと弱さ、そして狡さが、妙に生々しい人間らしくバランスが取れていて安心して見守っていられるキャラです。

続いて相棒的な立ち位置となるロゼルも、一癖二癖あります。
普通の作品なら女性を置くじゃないですか、普通。けれどロゼルは女性ものの服を着た男性なんです。
しかもオネエという訳ではないんです。今巷でよく議論されている、ジェンダーの話を不快感なく落とし込んで、生きている人間としてしっかり書き上げているのは「凄い」の一言につきます。

他にも魔女である面々もとても魅力的で、作中でどんな物語を紡ぐのかは、是非本編を読んでいただきたく思います。

個人的にもっともっと評価されてほしい作品です。

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