第6話 連れ込んだセフレが地味子と仲良くしていた!

同居生活が始まって2週間になる。ようやく慣れて落ち着いて来た。今日は金曜日だ。7時半に恵理とホテルのレストランで夕食を約束している。


約束の時間に着いたが、まだ恵理は来ていなかった。予約席で待つこと20分、ようやく現れた。もともと自分は時間にルーズなくせに、俺が遅れると結構文句を言う。


「待たせてごめんね」


「ああ、20分も待った。すぐに食事を始めよう」


恵理はセフレだ。年齢は27歳。合コンで知り合って意気投合して、すぐに男女の関係になった。もう1年位になるが、彼女には他にもセフレがいるらしい。


はっきりとは言わないが、週末にこちらから誘うと2回に1回は都合が悪いと言うからそうだろう。そして次の週に向こうから誘ってくる。


月に1~2回会うという気楽な付き合いだ。恵理も気楽に俺と付き合っている。今の自分には好都合な相手だ。食事はほとんど俺が奢る。彼女は大学卒の正社員と聞いている。名の知れた会社に勤めているので、時々会社や仕事の話をすることもある。


でもキャリアウーマンと言うほどではない気がする。仕事も私生活も楽しむタイプだ。他社の状況も聞いておくとためになるので、情報収集といった観点からも付き合っていて損はないと思っている。


食事が終わるとホテルの最上階のラウンジへ行く。見晴らしも良いし女子はこの雰囲気を好む。値段も知れている。この辺のどこかのバーへ行くよりもよっぽどコスパが良い。


そのままホテルに部屋をとって泊ることもあるが,気心が知れてきたこの頃はお互いの部屋に泊まるようになっている。これまで3回に1回は俺の部屋に来ていた。


ただ、親父のマンションへ引っ越してから、部屋へ連れてきたことはなかった。どうしても泊まりたいと言うので断るまでもなかった。


「ちょっと待って、電話を入れさせてくれ」


「誰か家にいるの?」


「ああ、従妹つまり親父の妹の娘が一緒に住んでいるから、一応連絡しておく」


「へー、従妹ね。会ってみたいわ」


「顔を合わせないように頼んでおくから」


席を外して、地味子の携帯に連絡を入れる。


「白石さんか? 俺だ。これから女性を連れて行く。俺の部屋に泊まる。だから君は部屋からできるだけ出ないでくれ。それから君のことは従妹ということにしてあるからよろしく」


「分かりました。鉢合わせしないように気を付けます」


上手く連絡がついた。これで一緒に帰れる。


この時間はもう玄関受付にはコンシェルジェはいない。毎回連れが違うこともありえるので、まあ、見られない方が無難だ。この時間は1階のロビーで住人に会うこともまれだ。エレベーターで部屋へ向かう。


「すごいマンションね」


「親父のだ。維持費がかかって困っている」


「お部屋を見るのが楽しみだわ」


ドアを開けて恵理を招き入れる。地味子とはできれば会わせたくない。地味子は部屋にいて「おかえりなさい」とも言ってこない。


「すごく広いわね、これが億ション?」


「築年が古いけど今買えば2億位はするそうだ」


「俺の部屋においで」


「従妹さんはどこにいるの?」


「向こうの部屋だ。出てこないように言っておいた」


「せっかくだから会ってみたかったのに」


「疑っている?」


「じゃあ、会わせてよ」


「会ってもしょうがないだろう。恵理、君の方がずっと魅力的だ。それに従妹だ。張り合ってもしかたがないだろう」


「分かったわ」


「シャワーを浴びないか?」


「そうね」


ようやく恵理は諦めた。女の直感なのか? 従妹を疑っている。これが最良の設定と思っていたが、確かに嘘っぽくは聞こえる。関係を疑うのは当然だろう。


俺がシャワーを浴びていると、恵理も浴室に入ってきた。ここまでくるといつもの二人に戻っている。お互いに身体を洗い合っていると、その気になってくるのに時間はかからない。すぐにベッドで愛し合う。


以前の1LDKの部屋にはセミダブルのベッドを置いていたが、ここのメインルームは広いのでダブルベッドを置いている。これだけ広いと愛し合った後も二人ゆっくり眠れる。とはいうものの恵理は俺にしっかり抱きついたまま眠っている。


こんなところが恵理の好きなところだ。いつも突っ張っているようだが、可愛さを感じる。このように抱きつかれると悪い気はしない。そう感じるのは俺だけだろうか? 心地よい疲労と恵理の温もりにいつしか眠ってしまった。


◆ ◆ ◆

部屋の明るさで目が覚めた。窓から青空が見える。目覚ましを見るともう8時を過ぎている。まだ、寝足りない。もう少し眠りたい。


抱きついて寝ていたはずの恵理がベッドにいないのに気が付いた。まさか! 地味子に会いに行った?


とりあえずシャワーを浴びて、部屋着に着替えてリビングへ行くと、恵理はソファーに坐ってトレーナー姿の地味子と仲良く話をしている。


「おいおい、二人共どうしたんだ? 何の話をしているんだ? 俺の悪口でも言っていたのか?」


「目が覚めたら喉が渇いたので、冷蔵庫に何かないかと出てきたら、従妹さんに会ったからご挨拶をしてお互いに自己紹介をしていたところ」


「それで、気が済んだのか?」


「いい人と同居しているのね、掃除と洗濯をしてもらっているなんて、ずぼらなあなたにはピッタリね。結衣さんから聞きました」


「話したのか?」


「はい、聞かれたのでお話しました」


「そうか、恵理はそれで気が済んだのか?」


「ええ」


恵理は地味子を見て安心したようだった。仮に従妹が嘘だったとしても、彼女が俺の趣味ではないと一目で分かったはずだ。これなら誰を泊めても二人の関係を疑われることはないだろう。


同居を地味子にしてよかった。しっかり対応してくれた。これで地味子にも気兼ねなく女性を泊められる。


それから、3人一緒にいつもの朝食を食べた。朝食を食べ終わると恵理は帰っていった。地味子は土曜日の今日はこれから全部屋の掃除と洗濯を始める。俺はソファーに坐って終わるのを待っていればいい。


お昼近くになって掃除と洗濯が終わった。


「ご苦労さん、ありがとう、疲れただろう」


「いえ、お家賃分と思えば楽なものです。あとシーツとバスタオルなどが乾燥中なので、1時間もすればお仕舞いです」


「手が早いね、俺がやっていた時には丸1日かかっていたけど」


「3~4時間もあれば十分です」


「そうか、プロならそれくらいか? 白石さんが来る前は掃除の業者に頼んでいたんだ。でも費用がバカにならなくて、それで掃除してくれる同居人を探したんだ」


「これくらいで家賃が格安なんてラッキーです」


「コーヒーを入れてあげよう」


「ありがとうございます。本当にコーヒーがお好きなんですね」


「ああ」


淹れたコーヒーをソファーまで運んでいく。


「恵理さんとかいう人、素敵な人ですね? いずれは結婚するんですか?」


「いや、考えていない。彼女も今は考えていないと思うけどね」


「それじゃあ、なぜ泊っていくんですか?」


「まあ、いわゆるセフレかな」


「でも私のことが気になったみたいでいろいろと聞いていました。それはあなたのことが気になっているからです」


「そうかな、彼女もフリーでいたいと思っているはずだ」


「自分の将来を考えないで女子が泊って行くことはないと思いますが」


「そうかな」


「私には考えられません」


「そんなに堅苦しく考えることはないと思うけど、今が楽しければいいんじゃないかな、先のことは分からないしね」


「先のことは分からなくても将来展望は大切だと思いますけど」


「君はどうなんだ?」


「今は付き合っている人がいませんから将来展望もありません」


「そうなんだ」


「午後から出かけますので、これで失礼します」


地味子はコーヒーを飲み終えるとカップを片付けて自分の部屋に戻って行った。しばらくして出ていった。外出するときの姿を見たが、相変わらずどこかのおばさんのような目立たない地味な服装だった。

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