第13話 インフルエンザに罹った!

午後の会議中に頭が痛くなった。企画の説明をしたが上出来だった。質問も想定の範囲内で無難に答えることができた。緊張したせいかとも思ったがそうではなさそうだ。


ようやく会議が終わった。席に戻っても身体がだるい。仕事の疲れが出た? ひょっとしたら風邪を引いた? いやインフルエンザか? 隣の席の山田さんは二日前から休んでいる。インフルエンザとの連絡が入っていた。


悪い予感がする。仕事に集中できないので早退することにした。幸い今日はこの後の予定はなかった。部長に午後半休を申請をした。「最近は忙しかったから疲れが出たんだろう、ゆっくり休んでくれ」と言われた。


食欲がなかったが、帰りにコンビニで夕食用にサンドイッチとおいしそうなケーキ、それにポカリを買った。


マンションの自分の部屋ですぐにパジャマに着替えてベッドにもぐりこんだ。疲れていたんだな。すぐに眠ったみたいだった。


目が覚めるともう薄暗くなっていた。頭痛は治まっていない。熱はあるかと測ったら39℃もあった。道理で身体がだるい訳だ。買い置きの解熱鎮痛薬があったはずと探す。見つかったのでとりあえず飲んでもうひと眠りする。


次に目を覚ました時は、寝汗をかいていて、下着がびっしょり濡れていた。すぐに着替えをした。パジャマも替えた。何時ころかと目覚ましを見ると午後8時を過ぎたところだった。熱を測ると37℃あった。


喉が渇いているので冷やしたポカリを取りにキッチンへ行こう。ついでに冷凍室にアイスノンがあったはずだから持ってこよう。


部屋を出ると地味子が丁度夕食を食べているところだった。


「帰れられていたんですか? 気が付きませんでした」


「体調が悪くて早退してきた。部屋でずっと寝ていた」


「大丈夫ですか?」


「風邪か、インフルエンザかもしれない。熱がある」


「医者に診てもらいましたか?」


「いや、たいしたことはないだろうと思って様子を見ることにした」


「お薬は飲んだのですか?」


「頭も痛いので解熱鎮痛剤を飲んで寝たら汗をかいた。今着替えをしたところだ。俺に近づかない方がいい。移るといけないから、それに手をよく洗ってうがいをしておいた方がいい」


「私に何かできることはありますか?」


「特にないけど、何かあればお願いする、その時は携帯に電話するから」


「そうしてください」


俺は冷蔵庫から買ってきたサンドイッチとケーキとポカリを取り出して部屋に戻った。ひとりで食べて地味子には移さないようにしないといけない。


食べながらポカリを飲む。冷たいポカリが美味しい。お腹が落ち着いたところでもうひと眠りした。


夜中に寒気がした。体温を測ると39℃もある。また、解熱剤を飲む。時計は2時を指していた。寒気を我慢していると眠ってしまった。


また、汗をかいているのに気づいて目が覚めた。4時を過ぎたところだった。下着とパジャマを着替える。体温は37℃。頭痛は治まっている。喉が渇いた。枕元のポカリは空っぽなのでキッチンまで飲み物を取りに行くことにした。


ドアの音か冷蔵庫のドアの音で気が付いたのか、地味子が起きてきた。


「大丈夫ですか?」


「喉が渇いたから、飲み物を取りに来た」


「電話してくれれば、持って行ってあげたのに」


「折角眠っているのに起こすのも悪いと思って」


「こんな時は遠慮しないで下さい。それより本当に大丈夫ですか?」


「寒気がして熱が出た。解熱剤を飲んだら、また汗をかいて、下着やパジャマを取り換えた」


「下着やパジャマはまだ新しいのはあるのですか」


「もう一組くらいはあるから大丈夫だ」


「熱は?」


「今は37℃。これより下がらない」


「明日、医者にかかった方がいいです。必ず行って下さい」


「様子をみてからでいいだろう」


「必ず行って下さい。約束してください」


「分かった。それほどまでいうなら行くよ」


「朝になったら、朝食を準備して、洗濯をしますから、それまでゆっくり休んで下さい」


俺は部屋に戻った。咳は出ないが、節々が痛い。とりあえず眠ろう。


◆ ◆ ◆

ドアをノックする音で目が覚めた。地味子の声がする。


「大丈夫ですか?」


「ああ、大丈夫だ。今、熱を測る」


「どうですか?」


「38℃ある。今日も休むから」


「下着とパジャマを着替えて、とりあえず、朝食を食べませんか? 食欲はありますか?」


「お腹は空いている。すぐ行く」


着替えをしてリビングダイニングのテーブルに行くと、もう朝食が準備されていた。地味子はマスクをしている。


「私はもう済ませましたので、ゆっくり食べてください。その間にシーツと枕カバーを取り換えて洗濯します」


地味子はそういうと俺の部屋に入っていった。


朝食を食べ終わったので部屋に戻ると地味子はすでにベッドのシーツや枕カバーを新しいものに交換し終わっていた。そして、洗濯機に着替えた衣類を入れて洗い始めていた。


「このままにしておいてください。お昼に来て洗濯物を片付けますから」


「自分でするから、いいよ」


「言うとおりにしてください。身体を大切にしてください。それから必ずお医者さんへ行ってください。約束してください」


「必ず行くから」


「それより白石さんに移らないか心配している」


「心配ご無用です。インフルエンザの予防注射は毎年必ずしています。今までインフルエンザにかかったことはありません」


「でも油断しないで」


「大丈夫です。今も気を付けています」


俺がベッドに横になるのを見届けると、部屋から出て行った。洗濯機は勝手に回って乾燥もしてくれる。


8時過ぎに地味子が部屋のドアを開けて顔を出した。


「いいですか、お医者さんへ行ってくるのですよ。それからお昼に見に来ますからね」


そう言い残すと地味子は出勤した。結構口うるさい。でも心配してくれるのはありがたい。9時になったら、会社に電話して、近くの医院へ行こう。


◆ ◆ ◆

大通りにある医院まで歩いて行った。少し頭が痛い。朝早かったのですぐに診てもらえた。


インフルエンザA型だという。薬をくれた。安静にしていれば2~3日で治ると言われた。これで一安心だ。帰りにコンビニによってパンと飲み物、ポカリを多めに買った。


帰ってベッドに横になる。やはり、身体がだるい。熱は38℃ある。熱がなかなか下がらない。まあ、1日寝ていよう。こういう日もあっていい。ウトウト眠る。


ドアをノックする音で目が覚めた。すっかり眠っていた。目覚まし時計は12時を過ぎている。マスクをした地味子が顔を出す。


「お医者さんへ行ってきましたか?」


「ああ、行ってきた。お薬ももらってきた」


「なんと言われましたか?」


「インフルエンザA型、2~3日安静にしているように言われた」


「じゃあ、おとなしくしていてください」


「そうするしかないだろう」


そういうと、部屋に入ってきて、洗濯機から乾燥した衣類などを出して畳んで、クローゼットにしまってくれた。


「お昼はどうします」


「コンビニでパンを買ってきたから後で食べる」


「今は、その位がいいですね。夕食はいつも作っていますから、それを食べてください。お腹にやさしいもの考えますから」


「食べに行けないのでお願いできるかな。助かる」


「じゃあ、おとなしく待っていてください」


そう言うと、地味子は部屋を出て、会社へ戻っていった。地味子がいてくれてよかった。助かった。


それから、飲み物とパンで簡単に昼食を済ませてまた眠った。よくこれだけ眠れると思うくらい眠った。それでまた寝汗をかいて目が覚めた。地味子が洗濯をしておいてくれてよかった。また、着替える。今度はもう眠れない。時刻は5時前になっている。


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