時間と空間のむこうを。

英雄でもなんでもないふつうの、むしろいろいろな問題を抱えている登場人物たちが、与えられた能力を発揮しつつ互いにたすけあい、成長し、銀河規模のたたかいに身を投じてゆく。

まさに八十年代のふるき佳きSFたちが想起される設定であり、はるか先に待っている巨大な敵との決戦にむけて少しずつはなしが進んでいくのだろうと、わたしはある意味で身構えてこのお話の世界に足を踏み入れました。

ですが、読み進めていくうちにそのことはいったん、忘れさせられます。兵器と化したはずの、あるいは異界からやってきた「にんげん」たちが、なんというか鮮やかで、宇宙にすら影響をあたえるほどの凄まじい能力をつかいつつ、毎日わちゃわちゃと構ってくれている気になってきて。

作者さまご自身も作中で書かれていますが、情景や戦闘の描写でもしっかりとした考証があり、SFファンが喜びそうな舞台装置がたくさん散りばめられています。そうしたものを背景に、人間やそうでないものをふくめた登場「人物」みんながかかわり合って場面場面をみせてくれます。

そうして大団円、ラストでは、しっかりと、不敵なほどに正面を切って、作者さまはほんものの空想科学小説を置いていってくださいました。

続編のご執筆もお考えとのこと。そうです。空想科学は、まて次号!があってこそです。