絶対にいじめられてはいけない学校生活

 朝。さあ、学校が始まる。

 校門前で瞳さんの愛車を降りた私は校舎を見据えた。

 ここまで車で送ってもらったことで他の登校する生徒から奇異の目で見られても、気にしない。針のむしろには慣れている。それこそが馴染んだ私の居場所だった。

 でも今日からは刺されるままでいるわけにはいかない。

 今朝は銭湯に寄ってから来た。「朝風呂なんて贅沢」とは思ったけど言わない。この間入学したばかりでまだ新しい制服は色んなことがあったせいで早速くたびれていたのに、なぜかキレイになっていたことも瞳さんに問いただしはしなかった。風呂上りには先生から咎められない程度に薄く化粧までしてもらっている。

 それが覚悟の戦闘準備だと伝わっているようで、瞳さんのほうが固い顔つきをしていた。

「……いってらっしゃい。しっかりね」

 私は黙って頷き、校舎へ向けて踏み出す。

 ヒビ割れの目立つ古びた鉄筋コンクリートの三階建て。その向こうにはよく知った山が見張るようにして控えている。「ここは山に近過ぎる」と瞳さんが心配していた。私が学校で嫌な目に遭えば必ず神様が気付いてしまうと。

 考えてみれば山に食い込むような位置にあるこの一帯は大昔に起きた地崩れの跡なのだと思う。その出来事を悲劇と呼ぶべきか因果応報と呼ぶべきかはわからないけれど、同じことをこの時代に繰り返すわけにはいかない。

 私の、絶対にいじめられてはいけない学校生活が始まった。


 いくら私でも登校するなり蹴飛ばされるようなことは滅多にない。教室に入るまで無事でいられる確率は四割くらいだ。今日は運が良いほう、と受け止めるには周囲の様子が違っていた。

 瞳さんの存在が影響している。きっと私が校舎に入るまでの間は校門の位置から周りを睨み倒していたから、同時に登校した生徒たちはちょっかいをかけて来られなかったんだと思う。

 それだけにしては昇降口で靴を履き替えてからも様子がおかしかった。経験上教室に向かう廊下で後ろから頭を叩かれることが多いのに、今日はそれもない。

 二つ目の理由は後ろからじゃなく前からすれ違いかけた女生徒が大きな声を上げたことでわかった。

「どしたの? いつもと感じ違うじゃん! あっ、髪切った?」

「髪どころの騒ぎじゃないっしょw 別人www」

 女生徒がふたり、近寄ってきて騒ぎ始めた。信じられないことに、この私が普通に話しかけられている。

 どうやらイメージチェンジが功を奏しているようだった。朝風呂と化粧は私が今までとは違うことを何よりも自分自身に知らしめる目的だったけれど、前からでも驚くなら後ろからだと私とはわからないはずだ。それなら不意打ちに叩かれなかったことも納得できる。

 絡まれない幸運の理由が発覚したことよりも、急に話しかけられたことに驚いて戸惑ってしまった。「こんなの初めて」とか「この人たち誰」とか、色々迷うことはあるけれど質問されたら答えなくちゃいけない。

「ええと、これは瞳さんに全部やってもらってですね。今は外してるんですけどウィッグで瞳さんとお揃いにできるのが個人的には嬉しくて――あう」

 焦ってわあっと早口になってしまい、「しまった」と口を噤む。第一名前を出したって瞳さんを知らないこの二人にはわからない。説明しようにも瞳さんの素晴らしさをきちんと伝える自信がない。

 仕方ないので全部を一言にまとめることにした。

「……好きな人ができたので」

 言った途端、「おお~!」と歓声が上がった。

「いいじゃん! あとで話聞かせてね!」

 大声に反射で力んだ背中をバンと叩かれ「ひぃ」と小さく悲鳴が出る。二人はそれに気付かなかったようで上機嫌で去って行った。

 対応を間違ったのかもしれないと不安はあるけれど、不思議と叩かれた背中は痛くなかった。辺りを見回しても一昨日襲ってきた黒い影は見当たらない。

 神様は今のを見逃してくれたんだろうか。

「これじゃダメだな……ちゃんと変わらなきゃ……」

 今のところ瞳さんのお膳立てで凌げているだけで、私の努力しているところは一つもなかった。

 気を取り直して教室へ向かう。学校生活はここからが本番だ。格下に見なされない為の立ち振る舞いは神様を参考にする。

 神様はデコボコの山道を爪先で滑るようにスッスッと歩く。体がほとんど揺れない。あの優雅さをそっくりマネはできなくても、平らな床なら有利だ。足音を忍ばせる泥棒のようになっている気がするけれど一歩一歩に神経を集中して廊下を進んだ。

 教室に入り、最前列にある自分の席に着いてから背筋に緊張をみなぎらせる。連休前から残っている机の落書きに手を出せば姿勢を戻せない気がしたのでそのままじっと耐えた。

 なんだか教室がいつもより静かだ。

 教室という空間では偉い人ほど大きな声を出せることになっている。偉い人は他人の都合に配慮しなくていい特権があるので、どんなにうるさく騒いでも誰も文句を言えない。

 だからこそ誰もが自分の偉さを示したくて「我こそは」と騒ぐのだけれど、どういうわけか今日に限ってはみんな大人しかった。私が来た時点でもうほとんど登校していたのに、ヒソヒソと囁く声ばかりが聞こえてくる。その声が自分に向いているような気がするのは自意識過剰だろうか。大体、私の悪口なら声を潜める必要がない。いつも通りもっと大っぴらに罵ればいい。

 内心ビクビクしているうちにそのまま何事もなくホームルームが始まり、担任の先生が私を見て一瞬ギョッとしたくらいでその後の授業も含めて滞りなく進んだ。



 色んな違和感が無くならないまま、今は昼休み前。給食の時間になったので教室を出た。

 給食の支度は全部私がすることになっている。一人だとどうしたって時間がかかるから急がなくちゃいけない。

 給食が届けられる搬入口へ向かう途中、今朝話しかけてきた女子二人とバッタリ出くわした。顔を見るなり指差して笑われたからビクッとする。

 瞳さんについて「あとで」話すことになってはいたけれど、それを「今」にされてしまったらクラスの給食が遅くなってしまう。それで叱られて神様が怒ったら、この学校が災厄に見舞われる。その為にもここで時間は使えない。

「すみません! 今はちょっと急いでるので!」

 振り切るつもりで先を急いだら、なんとあとを付いて来た。これは困った。

「ヒィッ、なんで付いて来るんですか!」

「いーからいーからw」

「手伝ったげるからさー、サッサと終わらせてカレシの話聞かせてよ」

「いやカレシっていうか――」

「あ、まだ付き合ってないんだ?」

「そういうことじゃなくって――」

「いーからいーからw」

 結局搬入口まで付いて来られた。だからと言って作業は遅らせられない。

 まずは重いけれど運びやすい牛乳の浅いカゴを重ねて運ぼうとすると、二人が汁物の大きな容器を持ち上げた。ブリキの容器には私のクラスの番号が記してるから実は給食当番だったというわけじゃない。

 そのまま持ち逃げされたほうが私の日常には相応しいのに、二人は戸惑って立ち止まった私をふしぎそうに見るだけで動かなかった。どうやら本当に、手伝ってくれるつもりで私が動き出すのを待っているらしかった。

 こういう時に、以前だったら混乱して悲鳴を上げていたと思う。でも今の私は他人の親切を信じられる。

「ありがとうございます! とても助かります!」

 二人は驚いたような、泣き出しそうな、なんとも言い表しにくい顔をした。


 いつもなら何度も教室と搬入口を往復をしないといけないところ、今日はたった二回で済んでしまった。

 そのあとも二人が教室に残って配膳まで手伝おうとするのを見て、他のクラスの生徒の世話になるのは気が引けたのかクラスメイトたちが動き出した。

 助かるけれど良くない。これは私が叱られる流れだ。二人の親切心から出た行動でも、その結果私の仕事をクラスメイトにやらせてしまった。不満はきっとこの二人がいなくなってから爆発する。

 ところがこの二人、配膳が終わっても自分たちのクラスに戻らず、そのあとまで居座る姿勢を見せた。

「ねえ、席空けてくんない? 給食も置いてってね。いーじゃん、クラス違ってもメニューはおんなじなんだからさ、ウチらのクラスに行って食えば。そう? ありがとー」

 強引な交渉でクラスメイトを追い出してしまった。あまりの自由さに呆気に取られる。

(なんて強いんだろう……すごい神様ぶりだなあ)

 じんわり感動している間に私の席と机をくっ付けてきたので、トレーを持って教室の隅へ行くタイミングを失った。どうも「一緒に食べよう」という趣向らしくて、促されて着席してしまう。

「でさー! どんな人なワケ? あんたのカレシw」

 何事かと思えばそれを聞きたいだけらしかった。昼休みでもいいのに、その為だけにここまでするなんて驚きしかない。

「いえあの、付き合っているわけじゃなくて。『これからもずっと一緒にいられたら』って私が勝手に思ってるだけなので……」

「えー、でもそれ言ったんしょ? それで一緒にいてくれるんならそれもうカレシっしょ」

「ですから、彼とかではなくてですね……」

 ぶつけられる質問に受け答えしながら、中学に上がって初めて給食時間を自分の席で過ごしていることに思い当たった。しかも同級生といわゆる〝恋バナ〟をしている。連休前から考えたらものすごい変化だ。

 でも「喋りながら食べる」ということに慣れていないのでいつ口に入れたらいいかわからない。ちぎったパンをいつまでも指に摘まんだままでいるから小さく潰れてきた。

「相手 このガッコ? 違う? じゃあ高校生とか――あ、大学生だったりするんだ。へぇー、大人! やるじゃん!」

「急にキレーになってっからビックリしたってw その髪どこでやってもらったん? 店教えてよw つーか連れてってくんない?」

 この二人は同じ学年で別のクラスらしい。雰囲気が昨日の美容師さんに似ているのは目の周りのメイクが濃いせいだけじゃない。よくわからないタイミングで飛び出す笑い声。私に関心を寄せる素振りは他の人には無いもので、なにより良く褒めてくれる。

 そこまで知って、どうして私はこの二人を憶えていないのかがわかった。

(そうか、この人たち……私をいじめてなかったんだ……)

 この世に在るのは敵ばかり。すべての人は逆らえないくらい強くて偉い。神様と瞳さんが「それは嘘だ」と言って私の世界を壊してくれた。でも学校の中には別の真実があると当たり前に思っていたと自覚する。二人はこんなに強くて偉いけれど、私には関わって来なかったから顔を憶えていなかった。

(味方がいなかったんじゃなくて、敵しか見てなかったんだなあ。……ううん、『味方じゃないなら敵』って、勝手に思い込んでたのかも)

 自分の視野がいかに狭かったか、今更ながらに目が覚める思いがする。恐がるあまりに他の何も目に入らなくなって、思考停止でその場を凌ごうとする悪い癖を身に付けて辛い環境に留まった。

 考え込んでいたら急に頬っぺたを両側から引っ張られた。

「何一人でニヤニヤしてんのw 彼氏のこと考えてんでしょw」

「もっと可愛く笑いなって。〝恋する乙女〟のオーラ出してウザがらせてよ」

 これをいじめと見咎められたら大変だと慌てるよりも、聞いた意見が気にかかる。

「えっ、笑顔が可愛くないって致命的では? それは嫌です。瞳さんに捨てられるのは嫌なんです。なんとかしなくちゃ、可愛く笑わなきゃ!」

「いやそんなキツく言ってないって。だってなんか『クククッ』みたいな感じで笑うからさあ。もっとこうさあ――」

 つい取り乱したら、ありがたいことに正解の笑顔を教えてくれようと頬っぺたが持ち上がる。

 その手が、横から跳ね上げられた。

「お前なに調子に乗ってんの」

 横に立つ姿を見上げて体に震えが走った。

 顔を見ればすぐに誰とわかる。なにしろ私がこの教室で一番偉いと思っていた女子だ。クラスメイトのボス――略さなくても彼女はクボさん。後ろに引き連れたグループ含めて全員知っている。私と接点があるクラスメイト。私をいじめていた人たち。

 クラスの秩序の守り手が、正常な状態を取り戻すべくとうとう仕掛けてきた。

「お前何普通に給食食べてんの? そんなこと許した憶えないんだけど」

 絡まれたのは私なのに、二人が立ち上がって突っかかった。

「ハァ? 今ウチらが話してんだけど? つーか手、痛えし」

「今給食時間なのにどうしたw どんだけ食うの早いワケw 下痢になれw」

 この二人はクラスが別だからクボさんの支配下にはない。だからと言って縄張りを荒らされたクラスの王が退くはずもなかった。

「違うクラスの奴がしゃしゃり出て来んなって。こいつはうちのクラスの奴隷なんだからね。勝手に馴れ馴れしくされちゃ迷惑なんだけど」

 髪や服を綺麗にしたところで扱いは変わらないという宣言を聞いて胃が縮む。口の中がすっぱくなって、食べたばかりの物が上ってこようとする。瞳さんがお膳立てしてくれたおかげで無事に過ごせたのもここまで。

 ここからは自分の力でなんとかしなくてはいけない。それなのに、急に視界が狭まっていくのを感じて俯くことしかできなかった。

 無力な私の隣で衝突は続いた。

「奴隷とかw 貴族かっつーのwww」

「このクラス前から気に入らなかったんだけど? いい加減言わせてもらうけどさ――」

「あーハイハイ。じゃあ友達よ、お友達。……江根えねさん。こんな下品な人たちより私たちと一緒に食べなさいよ。ホラ、早く」

 腕を掴まれ体がすくんだ。今までにされたことを体が憶えている。

 私と一緒に仲良く給食を食べる。彼女とその取り巻きがそんなことを望むはずがない。瞳さんの話を楽しく聞いてくれるはずがない。用件は最初に聞いた「調子に乗るな」がすべてで、罰を下すつもりに違いなかった。

 連休前と同じ展開へ行き着いて、恐怖と苦痛の記憶をなぞれば祟り神が目を覚ます。確実に、事態は破滅の方向へと進んでいる。

『いってらっしゃい。しっかりね』

 不意に、瞳さんに校門で見送られた時のことを思い出した。

 疲れた顔をして見えたのはきっと寝不足。あの人は私の為に骨身を惜しまない。それこそがんばってくれる。私が自力で問題を解決できずに失敗したらまた余計な面倒をかけることになる。そうなれば役目を果たせなかった私は瞳さんに失望される。それは嫌だ。

 覚悟を固めて立ち上がり、腕をギリギリ締め上げる手を逆に掴み返した。

「んんんっ――ええ、友達ですとも! さあなんの用ですか、どこへでも一緒に行きましょうマイフレンド!」

 私が大きな声を出すと、教室中が固まるのがわかった。

(絶対に! いじめられるわけには、いかない……!)

 その為には私自身が変わらなくてはいけなかった。誰かが守ってくれることを期待してもそんなこと一日だって続かない。

 具体的に〝変わる〟ということが何をすることなのかわからないから、普段とは180度違う行動へ踏み出していく。

「私たちは仲良し、仲良しですよー!」

 クボさんと肩を組んで、室内からは見えないけれど山の方に向かって何度も呼びかける。

 そうするうちに呆気に取られていた周囲の硬直が解けた。

「……バカにすんな!」

 強引に振り払われて、弾みで床に倒れた。悲鳴が出たのは他人の口。私は舌を奥へ引っ込めてぐっと耐える。

「なにするんですか、友達なのに」

「格下のくせに調子乗ってんじゃねーよ!」

 頭を蹴りつけられて眩暈がした。それでも構わず立ち上がって、肩を黒板へ擦り付け体を支える。

「格とか、そういうの誰が決めるんですか。私にだって私のことを大切にしてくれる人がいる。だから自分で自分の価値を下げられないんです。なにしろ大急ぎで瞳さんと同じ所まで登り詰めなきゃいけないので。こういうことで邪魔されて、いちいち立ち止まってなんかいられないんですよ!」

 スカートのポケットには瞳さんから渡された防犯ブザーがある。スイッチを押し込めば報せが届いて瞳さんが助けに来てくれる仕組み。でも、使わない。誰かに何とかしてもらったらそれこそ今までの私と何も変わらない。

「私は我慢が取り柄のいじめられっ子――そんな風に思ってたけど全然そんなことなかった。『自分が我慢すればいい』っていうのは正しい我慢じゃない。解決するほうが大変なんだから、私は一番簡単な方法に逃げてただけだった」

 私は神様ほど辛くはなかった。瞳さんほどがんばってもいない。そんな私があの二人にただ守ってもらうなんて不自然だ。自力で立ち向かわなくちゃそばにいる資格だってない。いい加減、守ってもらって当たり前――という立場を終わらせたい。

 私は自分の殻を突き破る一歩を踏み出した。もうこの道を進むしかないと臆病な心に言い聞かせ、謝って済ませたい衝動をなだめすかす。

 内容さえ間違えなければ思考停止は役に立つ。「こうするしかない」と心に決める。私の得意技。

「私はずっと逃げ続けていたから、だったらクボさん。あなたに負けてるわけじゃないよ。だって一度も立ち向かってない。本当はどっちが強いのか、試してみようよ」

 生まれて初めての正々堂々とした勝負なのでできるだけ毅然と宣戦布告したかったけれど、声は震えるし目は泳いでしまう。

 そのせいか、怯ませるどころか火に油を注いでしまった。

「勝手にベラベラ喋りやがって! 生意気なんだよ!」

 突き飛ばされて黒板に後頭部をぶつけた。もしウィッグを付けていたら留め具でケガをしていたかもしれない。暴力に訴えてくるなんて承知の上。絶対に退かない。

「『生意気』なんて言って責めるのは〝中身の無い人間〟だって瞳さんが言ってた。私が悪くてあなたが正しい理屈があるなら教えて」

「お前が格下な理由なんてわかり切ってるだろ。親にも愛されない〝要らない子〟が口答えするから生意気なんだ!」

 これまでならこれを言われた時点で終わっていた。なるほどと納得してしまう明解な理由。でも今は違う。

「もうそんな言葉に騙されない。瞳さんが私を特別にしてくれて、人権も貰った。でもそういうことだけじゃないんだよ。誰に愛されなくちゃいけないなんて決まってない。あなたは間違ってる」

 押し付けられた教義ルールの本質が見えてきた。格下だから従わなくちゃいけない――じゃなくて、従うから格下扱いされた。脅かして怯えさせて屈服させる、それだけのことだった。それはルールなんかじゃない。ただの暴力だ。

「自分に都合の良い教義ルールで私を見下さないで。クボさんの頭の中にいる私とここにいる私は関係ないんだから。私とケンカしたいんなら、ちゃんと私のこと見て」

 だからこそ大声に張り合わず、睨み返しもけっしてしない。相手の教義ルールが間違っていると判ったからそのやり方に則るのは嫌だ。神様と瞳さんに貰った勇気の使い方を間違えて二人をけがしたくない。

「フザケんな! ……フザケんなよっ!」

 正しさなんか一つもないのに威張れる性根の人間だから、マトモなことを言えなくなったら奇声を発して殴り付けようとしてくる。心臓がうるさく騒いで手足が痺れても視線は外さず「負けるもんか」と歯を食いしばった。

 でも、振り上げた拳が落ちてこない。騒然とする教室の空気に気付いてクボさんの気が逸れている。

 元々教室は騒がしかった。あの親切な二人が取り巻きに捕まって暴れたり、他の生徒の野次もあった。けれど今は全員一つに染まって表す感情は怯え。揃って見つめる窓の外には、例の黒い影があった。祟り神の使い。

 もし窓が開いていたところで入って来れそうにない大きな体は生き物の形をしていない。ムリに例えるなら節が付いた突起が蜘蛛に見える。見た儘を伝えるなら手だ。人間の腕。

 指の一つが反り返り、窓ガラスをドシンと叩いた。建物が揺れ、クラスメイトたちがワッと声を上げ出口へ殺到する。

「ほらぁ! やっぱりこうなる!」

 悲鳴がこだまする中、逃げようとしたクボさんを捕まえて抱き付く。なんとかして仲良しアピールを神様に届けなくちゃいけないから必死だ。

 でもそんな想いは伝わらないので顔をグイグイ押された。

「離せ格下! お前なんかが触ったら汚い!」

「私が汚れるのはいつもクボさんのせいだよ! っていうかこの状況でもまだいじめっ子続ける? 根性ある!」

「お前、頭おかしいんじゃないの? 離せ!」

 化け物に襲撃されている状況なので誤解されるのも仕方がない。先に逃げたらしい取り巻きから解放された親切な二人に泣きながら引っ張られるけれど、私が一緒に逃げるわけにはいかなかった。神様が関わっている以上、どこへ行ったって私が最前線になる。

「私だってあなたに好きでくっ付いてるわけじゃない。イチャつくなら瞳さんがいい!」

「こんの、いい加減にしろバカ!」

 もう一度拳が振り上げられる。反射的に目を瞑ったけれど今度も痛みは来なかった。

 ふしぎに思って細く開いた視界で、目の前の顔がパンプスに蹴飛ばされて横へ吹っ飛んでいく。

「うわっ……あれっ?」

 そういう風に見えた。確かに見た。でも、顔は変わらず憎たらしいままそこにある。どうやら幻覚を見たようだ。

「さあて、ここからは私に仕切らせてもらうわよ」

 嬉しい声を聞いて振り向けば教室の入口に瞳さんがいた。会った初日に着ていたスーツを着込み、幻覚で見たパンプスを履いている。一歩進むと出入口に詰め寄せていた生徒たちが進む道を空ける。

「私の可愛いめいちゃんに、随分なことをしてくれてるわね? あなたを本当にブッ飛ばさずにマヤカシで許した理由は三つ。一つ、めいちゃんが暴力を嫌うから。二つ、あなたが眼鏡をかけているから。三つ、私が大人だから。……最初以外はどうでもいいわね。実質理由は一つだわ」

 話しながら近づいて来て、私に手を貸し立たせてくれた。「がんばったわね」と労(ねぎら)いの言葉が耳元をくすぐる。

「でも私ダメでした。いじめられっ子をやめられなくて、あの通り神様が怒ってます!」

「ねー、一昨日見た時より強力になってる。あらかじめ結界を張っておいてよかったわ」

 さすが瞳さんは抜かりがない。どうやら昨夜帰りを急いだ理由はその結界というのを準備する為らしかった。神様に送られて神様対策をしに帰るのは気まずかったに違いないと申し訳なく思う。

「さて、結界はしばらく持つけど絶対じゃない。そこで……えーと」

 瞳さんが見回した教室にはもう他の生徒が逃げてしまって、残っているのはクボさんの他、親切な二人だけ。

「で、あなたたちは……どっち?」

 問いかけると同時に不自然に近い距離へ踏み込む。威圧された二人がギョッとするを見て慌てた。私には瞳さんが何を尋ねているのかがわかる。

「違います! その二人は〝こっち〟です!」

 瞳さんはちょっと驚いた風に振り向いたので私は頷く。すると表情から棘が消えてほほ笑みに変わり、二人に向き直った。

「そう、ありがとう。これからもめいちゃんと仲良くしてくれると嬉しいわ。それじゃあ出会いの記念に写真を撮りましょうよ。念の為に〝そっち〟のアンタも……おい、立て」

 まだ幻覚の中にいるのか呆然と座り込んでいたクボさんは軽く蹴られて反射的に立ち上がる。すぐさま食ってかかろうとしたけれど瞳さんが肩を掴んで押さえた。

「ハイ並んで並んでー、撮るわよー――」

 さすがにこれはなんのつもりなのかわからず戸惑っている間に一列に並ばされ、瞳さんが掲げたスマートフォンがシャッター音を鳴らす。いわゆる自撮り。それで見せられた画像は私の顔に動揺が現れているけれどクボさんのほうが酷かった。親切な二人はと言うとしっかりキメ顔でポーズを取っている。急なノリに合わせる能力が凄い。

「神社のほうにタブレットを置いて来てあるのよ。こっちで撮った画像を共有して自動で表示するって、神様にはわかりやすく説明済み」

 私が学校でうまくやっていることを神様に証明する為の措置、ということらしい。事実、窓を叩いていた怪物は姿が薄らいで消えた。取り繕いの仲良しアピールが通じたようだ。

 繰り返し鳴り続けていた轟音が止んで教室に静寂が戻ると同時、状況に流されていたクボさんが正気に戻る。

「……なんなんだよテメェ――」

 早速瞳さんを突き飛ばそうとした手首が捻じり上げられる。手際は鮮やか。一瞬にして床に組み敷かれた。親切な二人が「ヤッベ、カッケ」と感想をこぼすのを聞いて「これが私の好きな人です」と自慢したくなる。

 瞳さんは背中で重ねさせた腕に体重をかけながら低い声で凄んだ。

「よく聞けよクズ。アンタはもう終わりだよ。いじめっ子から失脚する。私は今日からこの学校の臨時カウンセラーだからね。絶対にめいちゃんを守るよ。ワガママを通せなくなったアンタの立場はずっとずっと弱くなる。そうしたらどうなるか知ってるね? 弱っていたり負い目がある人間を徹底的に叩く悪趣味の標的に、今度はアンタがなるんだよ。アンタの周りにいる大人は誰も弱い人間を守らない。味方はいない。そんな状況で何か余計なことしたら覚悟しな。私はめいちゃんほど辛抱強くないよ」

 たっぷり脅しをかけたあとで解放され、クボさんは真っ赤な顔をして教室の外へ走り出て行った。もう怪物はいないのに逃げるような勢いで。

「……めいちゃんゴメン。嫌なところを見せちゃったわね」

 瞳さんは力づくに頼ったことを反省してらしく、苦い顔を半分手で覆って嘆く。私の為にしてくれたことだから責めるつもりは欠片もない。

 それでも家を離れて以来ご無沙汰しているとはいえ、暴力的な光景に呼び起された――まだまだフレッシュなトラウマが脳内を跳ね回って身体が硬直する。瞳さんにはこんなことしてほしくないと、心のどこかで身勝手な理想を押し付けようとする自分が嫌になる。

 なんとか唇だけを動かしても言うべき言葉を見つけられないでいたら、不意に横から肩を突かれた。

「ねーねー、この人が江根チャンの好きなヒト? そうだしょ」

 その一言で、混乱していた頭の中がスッキリ片付いた。

「ハイ、この人が私の好きな人です」



 ほどなくしてクラスメイトたちは怖々と教室へ戻って来た。瞳さんの話した「山が近いから動物が下りて来るのねー」という白々しい説明で納得したとは思えない。ともかく安全を確認してそれぞれ給食に戻っていく。ただしその中にクボさんの姿は無い。

 教師陣も何人か来て教室を覗いたけれど、瞳さんを見るなり声もかけず急ぎ足で立ち去って行った。彼らにとっての安全はまだみたいだ。

 教師用のパイプ椅子を寄せて瞳さんも混ざって給食を食べることにした。給食はもう配り終えているので、瞳さんは持ち込みの固形携行食カロリーバーとパックのゼリー。私にとってはどちらも珍しい食べ物だったのでしげしげ眺めていたら、給食と分けっこすることになった。

「んで、おねーさん何者なんスかw 知ったら消される系だったら今の質問ナシでw 殺さないでwww」

 もちろん親切な二人も元通り一緒にいて、怪物襲来の一部始終を目撃したうえで瞳さんへの興味を露わにしている。私だって世界遺産と瞳さんが並んでいたら世界遺産を蹴飛ばして瞳さんに近付きたいから気持ちはすごくわかる。

「私は……そうねえ、なんというか、めいちゃんの一時的な保護者――の部下みたいなものよ。個人的な感情で動いてる部分のほうがもう大きいけど」

「わかんないわかんない。警察とか児童相談所とかならあんな強引なことするわけないじゃん。おねーさん只者じゃないっしょ」

「聞くなw 消されっしw」

「ちょっとちょっと、やめてよ。どう見えたって私はあなたたちにとってはカウンセラーになるのよ? ……めいちゃんに妙なことさえしなければね」

「一瞬目がマジに恐かったからこの辺にしとこ」

 瞳さんとも打ち解けて和やかに話しているこの二人の名前を知りたい。関心を持たれることは私にとっては財産なので、自分だけが知られている状況は不義理に思える。一方的に貰ってばかりはいられない。

 そう思ってはいてもなかなか聞き出せずに、スマートフォンでまた写真を撮った。神様が見てくれると知ったら色々と送りたくなったので瞳さんに借りている。教室の全体を、と思ったら他のクラスメイトが嫌がってサッと顔を隠したので仕方なく意味もなく天井を撮ったりした。

「ほらめいちゃん、行儀が悪いわよ。食べてからにしなさいね」

 口元にスプーンが運ばれて反射的に口に入れた。人前でも神社にいる時と同じように振る舞えることが嬉しい。

 そんな風にほんわかした気持ちでいたから、唐突にぶつけられた質問には戸惑った。

「どうして助けを呼ばなかったの。『何かあったらすぐ押して』って言っておいたのに」

 今もスカートのポケットに入っている防犯ブザーのことだ。押せば瞳さんが現れる素敵な緊急コール。

 質問に動揺して春雨スープの卵をよく噛まずに飲み込んでしまったけれど、瞳さんは約束を守らなかったことを怒っているわけじゃなかった。悲しそうな眼をしている。

「そんなに私って頼りない? 本当は学校に来てほしくなかった? 若者に混じってたら浮く?」

「そういうわけじゃ……なくてですね。ある意味では来てほしくなかったんですが。私のほうがみっともないところを見られたくなくて……」

 その他の理由は、これを言えば瞳さんにはガッカリされてしまうかもしれない。せっかく助けたのに、と失望されたら生きていける気がしない。

 それでも瞳さんには正直でいたかった。「どうか受け入れてほしい」と祈りながら打ち明ける。

「私がいじめられなくなったら他の誰かが同じ目に遭うんです。だからクボさんをやっつけるのは違うかなと。瞳さんが出て来たら圧倒的に勝っちゃうことはわかってたので」

 負けたくはなかった。でも、勝ちたくもなかった。争おうとすること自体が不毛だと示したかっただけだった。結局できなかったけれど。

 本音を伝えた。瞳さんは真剣に聞いてくれている。

めいちゃんはその『自分の代わりにいじめられる誰か』があの子になるのも嫌なのね? それでさっきあんなにショック受けてたんだ……。私、めいちゃんの望みとはまったく逆のことをしたのね。『追い込んでやる』みたいなセリフ吐いちゃったわ。恥ずかしい」

 瞳さんが両手で顔を覆って嘆くので慌てた。

「いえあの、自分でなんとかできたらよかったんですけど、結局できなかったから瞳さんのことを責めるつもりなんてないんですよ。それどころじゃなくなってたから、どっちみち呼ぶことにはなったと思います」

「そう言ってくれると気が休まるけど……あとであの子に『やり過ぎた』って謝っとくわ。正直、癪だけどね」

 瞳さんが笑ってくれたことに安心して、今度は私が瞳さんの口へスプーンを寄せる。じっと様子を見守っていた二人はなぜだか涙ぐんでいた。

 なんだか落ち着かない空気になったので、瞳さんに気になっていたことを聞いてみることにした。

「さっき〝カウンセラー〟って言ってたのはどういうことですか?」

「うん、スクールカウンセラー。どこにでもいるわけじゃないけどそう珍しいものでもないのよ? めいちゃんをそばで見守りたいから学校に居場所ポストを用意してもらったの。一応行動学やらなにやらかじってるし。と言っても医療レベルでは無資格だけどね。本当は今朝からのつもりだったのに、学校に話が通るのが遅れちゃったわ」

 昨日済ませておきたかったことは結界だけじゃなかったらしい。学校の人事に口を出せるなんて、瞳さんが所属している組織というのはどういうものなんだろう。

「スクールカウンセラーって、特定の生徒と一緒にご飯食べてていいものなんでしょうか? 私にばっかり肩入れして瞳さんが叱られるのは嫌です」

「その辺も含めてきっちり話は通してあるから心配しなくていいわ。私が守るのはめいちゃん――ひいてはこの地域全体の為なんだから。本当は同級生をねじ込みたかったんだけどね。これだけ急にはムリだったわ」

「瞳さんが、同級生……?」

 思わず瞳さんのセーラー服を想像したら横から揺さぶられて空想を中断させられた。

「私が、じゃないわよ? さすがにキッツイわソレ」

「ウケるw 完全にアレじゃんw」

 ソレとアレ。瞳さんに似合わない服があるとはまったく思えないのでよくわからない。

「ま、『もっと酷いことになるんじゃないか』って不安だったけど、めいちゃんの近くにあなたたちみたいな子がいてくれてよかったわ。……めいちゃんもがんばったし」

 頭を撫でられて自然と体を寄せそうになって、クラスメイトがいることを思い出し踏み留まる。でも二人には気付かれてニヤニヤされた。

「ねえねえw 連絡先交換しよw」

「あっ、ごめんなさい……。私、電話持ってないので」

 家の固定電話に連絡されたって取り次いではもらえない。第一今は家を出ている。

「そうよね、連絡手段がないのは不便よね」

 瞳さんの顔つきがウズウズと輝き出した。今にも「買ってあげよう」とか恐ろしいことを言い出しそうで冷や汗が吹き出る。

 どう断ったら納得してもらえるか悩んでいたら、助け船が出た。

「んじゃ、おねーさんの連絡先教えてよ。そしたら江根チャンとも繋がれるんしょ?」

「それはナイスアイディアですね。なにしろ私は瞳さんのそばから離れませんので」

 ハッシとしがみついて「だから個別の連絡先なんて必要ない」と主張する。じっと見つめたら瞳さんも照れながら納得した。

「それもそうね。じゃあめいちゃん、一旦スマホを返してくれる?」

 掌を差し出されて、戸惑う。

 求められているのは私が今借りているスマートフォン。これを渡せば瞳さんは二人の電話番号を登録する、その時には「二人の名前」という私が知りたがっていたことを知れるおいしい流れ。

 でも私がそれを「しめしめ」と見届けることはとても不誠実なことに思えた。自分の罪を告白しなければ、親しくしてくれる二人の真心に顔向けできない。

「えっとあの、実はですね――」

 名前を憶えていないことを話すと、ふたりは「違うクラスで今日初めて話したし」「名乗ってないし江根チャンが有名なだけだし」と笑って私を責めることはしなかった。本当に良い人たちだ。

 全部台無しになると自分で考えていた以上に不安だったようで、涙が溢れた。

「……よかったぁ、ごめんなさい。ごめんなさぁい……!」

 感極まって言葉も感情も混ざって漏れ出た。怖いことはないのに錯乱と変わらないくらい高揚してしまう。瞳さんは黙って頭を撫でてくれた。

 こんな幸運が二度あるとは思えない。身に余るものに思えても絶対に手放したくない。

 神様、友達が出来ました。



 給食を終えての昼休み。食器や容器の持ち出しはクラスメイトが請け負ってくれた。普段と違うことが起き過ぎて眩暈めまいを感じている間に「今までゴメン」と声を聞いた気がした。

「瞳さんは私の女神ですね。運命のレールを切り替えるレバーをガッシャンって倒す女神。恩返しは要らないって話でしたけどやっぱり何かしたいですよ。あっ、そうだ。学校の案内はいりませんか? 入学したばっかりなのでロクに知らないですし、知ってる所は嫌な思い出しかないですけど。『私が閉じ込められた場所ツアー』なら割とバリエーション豊かに――えっ、急にどうしたんですか?」

 窓から校庭を眺めつつ話していたら、いきなり瞳さんに教室から連れ出されてムリヤリ保健室のベッドへ寝かされた。

「何するんですか瞳さん。せっかくお喋りを楽しんでいたのに。……あっ、もしかして焼きもちを妬いたりしてくれてます? 私があんまり学校でうまくやってるもんだから寂しくなっちゃいました? 嫌ですね。他に誰が現れても私は瞳さん一筋に決まっているじゃないですか」

「それよそれ、はしゃいで喋り過ぎなのよ。元々めいちゃんは境遇の割に喋るとなったらよく喋るほうだけど、今はテンションおかし過ぎるわ。……ホラ見なさい、熱まで出てるじゃないの」

 額に瞳さんの手が触れる。指先が冷たくて心地良い。

「そりゃはしゃぎますよ。友達ができたんですよ? どう考えても今が私の生涯のピークなんですから、ここで命を燃やさなければ何の為に産まれてきたのかわからない……」

「今日初めて話した相手との友達付き合いで生き急ぐ覚悟を決めないでよ。……薄々感じてはいたけど、めいちゃんって人間関係の距離感が狂ってて依存度は振り切れてるわよね。ドン引きされちゃうからそういうのは私だけにしときなさい。……あれっ? 私もしかしたらいてたのかしら」

 嬉しい一言が聞けたので添い寝は要求せずに大人しくシーツを首元まで引き寄せた。

「うふふ、どうしよう。帰ったら神様に報告することがたくさんで困ります」

「まず元気にならないとね。帰ったとき、そんな風に真っ赤な顔で息切れしてちゃ、いくら『楽しかった』なんて報告しても説得力ないわよ」

「楽しいのに……」

 抗議は受け付けてもらえずに問答している間に昼休みを告げるチャイムが鳴った。保健室でサボって午後の授業を抜けるなんて今までなら考えられなかったことなのに、少しも不安を感じない。

 神様にあれを話そうこれを話そうと考えていたら、すぐに意識が閉じていった。

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