祟り神起きた
目が覚めるなり、吐き気に襲われた。
反射的に起こした体をそのまま前へ折る。胃が搾り上げられて昼に食べた物がベッドのシーツに落ちた。
窓のカーテンが日差しで照らされているのに視界が暗い気がする。とてもじっとしていられなくて自分で肩を抱いて震えた。保健の先生が心配して声をかけてくれているのも自分を責めているように間違う。
この恐怖と苦痛を知っている。でも、原因が見当たらない。親もクボさんもここにはいなくて、それなのに血が凍る思いで気ばかり焦る。
瞳さんの名前を呼ぼうとしたら、自分とは違う別の声が頭に響いた。
《なんじゃ、お主らは。……うん? 待て、それは
神様の声が聞こえる。
山から出られない神様はもちろんここにはいない。それでも聞こえる。不安と怒りが自分の感情であるかのように伝わってくる。
「神様……? どうかしましたんですか、神様!」
思わず口に出すと、保健の先生がぎょっとした顔をした。この声は自分にしか伝わっていないようだった。瞳さんが私と神様は『リンクしている』と言っていた。そのせいかもしれない。
神様に何かあったのなら瞳さんは呼んでも来ない。彼女の仕事の邪魔をしたくはなかった。かと言って知らんぷりもできない。私にも手伝えることがあるはず。
「すみません! 早引けさせていただきます。親には連絡しないでください!」
保健室を走り出て靴を履き替えるのももどかしく、室内履きのまま校舎から外へ。授業中か他の生徒は見当たらなかった。表の校庭もガランと空いている。
《そうか……お主らが
神様の声は続いている。その響きに怨念が混じる。
《許さん》
ゾッとする低音を聞いて足がもつれる。今のは確かに神様の声だったのに、それを信じられない。
ふと察するものがあって校舎の背に立つ山を振り返った。空に、山の上空に、真っ黒な雲が立ち込めて渦を巻いている。初めての銭湯のあとに見たときよりも濃くて禍々しい。
祟り神の目覚めに間違いなかった。
「そんな! どうして……? 私、引き金なんて引いてない! 幸せだったんだから、誰のことも『呪ってほしい』なんて思ってないよ!」
とにかく神様の所へ駆けつけなければいけない。
学校のすぐ裏が山ではあっても崖になっていてそこからは登れない。一番近い登山口はいつもの公園近くになる。慣れた場所を目指して走った。
急ぎたいのに不安と恐れで足が重い。涙で目の前が滲んでよく見えない。見たくないものを見ることになるとわかっているから、無意識に避けようとしている自分を憎んだ。何度も瞳さんが車で運んでくれた道がやけに長い。
やっとの想いで登山口へ着くと、不意打ちに怒鳴り声を聞いて体が震えた。けれどそれは私に対する罵声じゃなかった。
声のした方を振り向けば公園駐車場に瞳さんがいるのを見つけて、ホッとするより不安が増す。電話で話している瞳さんは明らかに苛立った様子で顔を歪め、空いた手で車の屋根を激しく叩いている。私には気が付かない。
「そんなこと、できるわけないでしょうが! ……させられるわけないでしょうが! アンタって子は昔っから本当に――」
怒りに堪らなくなったのか、瞳さんはスマートフォンを足元へ投げつけた。そしてその場に屈み込んでしまう。
「一体どうすればいいのよ……!」
悲痛な呻きを前に声をかけるか迷った。何を言っていいのか、私が触れていい問題なのかもわからない。
とりあえず足元へと滑って来たスマートフォンを拾い上げる。背面をこすってできた傷も気になるけれど、画面を見れば「通話中」と出ていたことでハッとする。受話口から声がしているものの、小さくて聞こえないので耳に当てた。
「あの、すみません。瞳さんは今ちょっと話せないかと――」
『……あなた、
誰かもわからない通話相手に名前を呼ばれて言葉が詰まる。冷たくて棘のある物言い。
『あなたのことは姉から聞いてる。丁度良い、あなたと話がしたかった。いや、話さなくてはいけなくなった』
姉。姉と言った。きっと瞳さんのことだ。養子に入ったと聞いたので血は繋がっていないのか、声は似ていない。いくら親しくしても他人の私ではどうしたってそれ以上には近しくなれない相手。
『聞こえてる? 聞いてもらわないと困るのよ。あなたがこの状況を鎮めなくてはいけないのだから』
「……どういうことですか? 私は何が起きているのかも知らないのに」
『あなたが起こした祟り神を構成する呪いの式が判明した。
それは瞳さんがずっと恐れていて、私もさせたくないと思っていたこと。
『このままでは前例に習ってその一帯に災いが起きる。当時とは人口密度が違うんだから、千人単位の被害が出る』
「なんで、そんな話を私に……?」
不幸なこと、嫌な出来事を聞けば「お前のせいだ」と責める言葉が耳の奥で反響する。しかもこれは本当に私が原因。神様を起こしたのは私だ。
『
神様の姿が思い浮かんだ。かわいいかわいい、小さな子供。それを殺せと声は言う。
「……普通の人にはできないって、瞳さんが言ってましたけど」
『祟り神と繋がったあなたなら殺せる。あなたにはその義務があるのよ。それでどうなるかなんて知らない。数千人と一人の命を比べれば、自分がどうすることが正しいのかは数を数えられるならわかるはず』
息を吸って、吐く。ゆっくりと何度も。
乾いた眼に映る中央に瞳さんが立って私を見ていた。
「電話を渡しなさい。そいつと話しちゃダメ」
泣きそうな怒り顔で、歯を食いしばっている。
「もう全部聞きました。……瞳さんが私に優しくしたのは、このときの為だったんですね」
荒ぶる神様に通用する切り札。それがけっして手放せない利用価値であることは、この怪異を目の当たりにすれば私にもわかる。
別に問題ない。元々瞳さんを手伝うつもりでここへ来たのだから、それが私にできることなら、望むところでしかない。
「
「妹さんがいるんじゃないですか。そっちを可愛がればいいじゃないですか」
「そんな奴ちっとも可愛くないわよ! 私より頭が良くて何もかも優秀で、私が勝ってるところって言ったら、神通力くらいなんだから」
受話口から舌打ちが聞こえた気がした。瞳さんは喚いてるけれど私の知らない思い出を見せつけられた気がして寂しい気持ちにしかならなかった。
「瞳さん、あの刀を貸してください。多分返しに来れなさそうなので、そこは先に謝っておきます。すみません」
「嫌よ! 私は
「生きるとか死ぬとか、私が決めることじゃないので」
「こんの――嘘つき!」
思いもしない言葉が瞳さんの口からぶつけられた。
「本当は何が何でも死にたくなくて、心の底では他人の押し付けなんかに負けたくないくせに! 死んだら何にもならないのよ? いいから逃げなさい! 私は送ってはいけないけど、今すぐできるだけ遠くへ!」
問答無用に体の向きを変えて背中を押された。それもすぐに止まる。
あの黒い怪物が正面にいた。教室を襲ったものと同じ、腕の形をした蜘蛛。今までに見たよりも輪郭がハッキリしている。
首を巡らせば遠く近くに何体も同じものがいて、山の木々の隙間から漏れ出すようにあとからあとから降りて来る。祟りがもう始まっている。
「大丈夫、こんなのおねえちゃんがなんとかするから――ちょっと
言葉とは裏腹に瞳さんは怯んで固まった。その隙に私を守ろうとする腕をすり抜け、前へと出る。怪物に近付く。
「私は逃げませんよ。だって私がいなくなったら、その役目は瞳さんが背負うことになるんじゃないですか。私にはそれが一番の不幸なので」
瞳さんにどんな思惑があったとしても関係ない。貰った優しさを私が本物だと信じる限りは本物だから。
「短い間でしたが、お世話になりました。この命が無くなっても瞳さんは変わらず私の恩人です。……ありがとう、おねえちゃん」
振り向いて「上手に笑え」と念じた瞬間、後ろから大きな腕に掴まれた。足先が地面から離れて体が浮く。瞳さんの叫び声が遠ざかっていく。
なんとなく、この怪物が私を傷つけないことはわかっていた。これが神様の力の一部なら、そうだと思う。正体が祟り神でも最初からずっとあの神様は私を守ろうとしていた。
自分一人安全なのに逃げ出すわけにはいかない。町ごと滅ぼす危険な神様を目覚めさせたのは私だから。救う数千人の中に瞳さんが含まれているから。散々言いなりで過ごしてきたここまでの人生に比べて、役目を果たさなくてはいけない理由がずっと切実なので義務を無視できない。
それに神様が呼んでいる。大昔に人々を守る為に生贄になった先輩が。
私が行かなくてはいけない。
結局丸腰になってしまったことには後悔があった。瞳さんの妹には「神様を殺せ」と言われたものの、武器が無い。叩いたり蹴ったりだと死なせる前に私の精神のほうが持たないと思う。第一そんなことは一度だってできない。
心のどこかに「話し合いでなんとかできるんじゃ」という期待があった。そんな若干の楽観は、神社の前で解放されたすぐあとに消し飛ぶ。
私を掴んでいた腕の蜘蛛が離れて、開けた視界はかなり暗かった。日光を遮る木々の枝葉の上に黒雲が立ち込めているせいで夜のような景色になっている。そこに佇むブルーシートを被せられたおかしな廃神社。私が見つけた楽園。
その前に小さな影が落ちていた。腕の蜘蛛よりずっと小さくて、姿形は見慣れた子供。
神様だった。真っ黒に染まって綺麗な髪も愛らしい顔もわからなくなっている。
「
駆け寄って手を握ると途端にしがみ付いてきた。覚悟で乾かした目にまた涙が滲む。
「神様どうして、どうしてこんなことに?」
「お主の家族なる者が来た」
ただでさえ騒いでいた心臓が一層強く跳ねる。
「家族って……今はどこに?」
首を巡らせてもどこにも見当たらない。そもそもここにいるなら黙ってはいないはずだ。私はとっくに殴られている。
確かに家族がここへ来た、それはわかった。簡易トイレのテントが倒れてクーラーボックスは中身が散乱している。荒らされた痕跡は散らかすだけで後始末をしないあの人たちの気配を残している。
家出したことを責められるに決まっているから、今にも神社の中から怒って飛び出して来そうでビクビクしていたら、一向にそうなる様子はなかった。気味が悪いくらいに静か。
ギチ、と木の枝が軋む音を聞いて見上げると、そこに黒い塊が吊るされていた。数は三つ。その内のひとつから人間の手が飛び出している。あの肥えた指は私を殴る父のものに間違いない。
「ヒッ……どうして、こんなことに」
家族が拘束されている。神様に、捕まっている。
「
私もわかった。瞳さんの妹さんが語った「山に入った
「引き金……引いちゃってたんだ」
「安心せい。もうこの者らに手出しはさせぬ。誰にもお前を傷つけさせぬ」
脇へ回った神様の小さな手に力がこもる。それが不自然なくらい強い。見る影もなく変わってしまって不安なのかと思っていたのに、そうじゃないとわかった。神様は今も怒り続けている。
「神様、違うんです。全部私がしなくちゃいけないことだったんですよ。そうしなかった私が悪いんです」
「いいやお主にはできん。何をされても怒らぬお主には。……このうえ己を責めるようなことをまださせるか、この世は!」
「神様、痛い。痛いです……!」
「これよりはすべてを神様に任せよ。
どんどんキツく締まっていく。神様が呪いの使命に囚われて錯乱している。
もうどんな言葉をかけても届かない。話が通じる段階を過ぎてしまったと悟った。
それなら、一番恐れていたことが起きる。
「それはいけませんよ、神様。
背後に瞳さんの声。何かが光って、一瞬辺りが明るく照らされる。
すると途端に体が自由になった。地面に手を付いて息を吸い、気が付けば神様は神社の屋根へと飛び退いている。
振り向くと白装束を着込んだ瞳さんがいた。両袖を前に垂らしてしずしずと歩いて来る。
「神様、お鎮まりください。ここは人の世、その子は人です。連れて行かせるわけにはまいりません」
落ち着いた重みのある声に神様が猛って答える。
「意見する立場か考えよ
「問答は無用とあれば力づくにて応えましょう。身命を賭し、お手向かいを致します」
「神に立てつくとはどこまでつけ上がる!」
神様が腕を振って黒い塊を飛ばした。ありもしない屋根瓦を投げるような動き。
それを瞳さんは両掌で弾いて落とす。物凄い音がして近くの木をなぎ倒したので物理的な力以上のものが働いていることが判った。
「天と地の間に上も下も無いことを示さなくてはなりませんから」
「人の身で何ができるものか!」
同じことが何度か繰り返されても瞳さんには通じない。前へ構えた両手を外へと広げ、大きな動作で柏手を打つ。
「否、我が身は人の身にあらず。大神の加護召すこの身は
瞼を閉じて唱えるような口調に荘厳な雰囲気が漂った。そこへ目がけて腕の蜘蛛が一斉に殺到して見えなくなる。
悲鳴を発する暇もなく、腕の蜘蛛はすぐに吹き飛ばされあぶくになって消えた。瞳さんは無事。ただし元通りではない。
「神を裁くが我が
目の縁に朱色の線が引かれた瞳さんが変わらずゆっくりと神社へ、神様へ向かって歩く。その姿は淡く輝いて見えた。それは錯覚ではなく現実に周囲を照らしていた。神通力。瞳さんは今超常現象の域にいる。
「神に通ずる力もて、我ここに願い奉る。大神よこの身に降りて現れ給え。この声に力を、この四肢に力を。人に仇なす敵を討ち、呪いを晴らし散らしめ給え!」
文字通り飛んだ瞳さんが神様へ躍りかかる。途中腕の蜘蛛が絡みついても突撃は止まらない。突き破って神社へ届く。
私の近くを通り抜けていく時に小さく鋭く「逃げなさい」と告げていった。見た目が違ってしまっても瞳さんはやっぱり瞳さんだった。
対して神様の方は、変わってしまったらしかった。
屋根を半壊させる一撃を受けても動じずに腕を振る。上から下へと落ちる間に巨大化した腕が地面を打った。ズシンと響いてカセットコンロと、空中で叩き落された瞳さんが跳ねて転がる。もし正気が残っているなら、あの神様がこんなことをするわけがない。
今朝までここで、この二人と楽しく過ごしていた。登校する私を心配そうに登山口まで見送ってくれた。もうあの時間は戻らないとわかって自分が引きちぎられたかのように心が痛んだ。
瞳さんがヨロヨロと身を起こしたところへ肥大化したままの腕が薙ぎ払う。正面で受けて後ろへ転がった。明らかに動きが悪くなっている。
「神の怒りを思い知ったか!」
「その怒りは神の怒りにあらず。その恨みはあなた様のものにあらず。この御代にあるべきもの、あるべきところへ返し給え」
果敢に立ち向かう瞳さんを神様が何度も執拗に打った。手足を使い、その度に体が大きく膨らみ怪物へと変貌していく。
決着がどうなるか、瞳さんにはわかっているはずだった。挑んで勝ち目のある相手なら、生贄にされてあんなに怯えたりしていなかった。なのに今こうしているのは、他にどうしようもなくなったからだとわかる。
二人が飛び上がり戦場は空中へ移った。頭上が時々雷のように光って大気が揺れる。凄まじい速さで激突している以上のことはもうわからずに心配でたまらない。
時々腕の蜘蛛が落ちてきて木々を砕いた。続けて雨が降って来たかと思うと、それは雨粒じゃなかった。
墨のように黒い液体は肌の上で滲まずに滑り落ちて、それを吸い込んだ地面が濡れずに黒く染まっていき、挙句にポコポコと泡を吐いた。温泉地の〝地獄〟に似ている。まさしく今ここは地獄だ。
これが山崩れの前兆なのだと察した。祟りが山を覆い尽くそうとしている。事態が悪い方へと急速に傾いている。
私には何もできない。木々が倒れて遮るものが減った空を見上げ、戦いを呆然と見守るしかなかった。不安を感じるのもおこがましいくらいに無力だ。
上空で一際強く寂しく光が閃いた。今度は雲の中。そのあとに落ちてきたのは、今度は腕の蜘蛛じゃなく瞳さんだった。まっすぐに墜落して大きくバウンドする。白装束は無残なくらいにボロボロで、光も顔の朱色も消えていた。
「
咳き込みながら呼びかける途中で気を失ってしまった。私はもう駆け寄る気力さえ失くして、へたり込んだまま動けない。
どこへ行ったって神様からは逃がれられない。この世にはこんな風にどうしたって逆らえない力があるのなら、何をしたってたどり着く結果は同じ。大きな力に道筋を作られたらもう終わり。その流れに呑まれるしかない。
残った木々に異形の手足を絡ませ獣のような唸り声を上げる神様を見上げて、もうとっくに諦めなくてはいけないのに頭の中ではずっと「どうして」が繰り返された。
膠着した時間に、くぐもった呻きを聞いた。振り向くと黒い塊が地面の上で蠢いている。
また新しい異変かと驚きはなく見つめていると、塊が割れて中に父の顔が見えた。吊るされていた樹が倒れて拘束が緩んだらしい。
「クソッ――お前! 何してやがる、さっさと助けろグズ!」
私を見つけるなりの罵声。物心ついた頃から聞かされ続けたそれを数日ぶりに浴びた。
その瞬間、私の中で何かが弾けた。
「全部お前のせいだろおぉ!」
衝動に突き動かされて駆け寄り、その勢いのまま身動きのできない父を蹴り飛ばす。
「私の友達をあんなにしやがって、どうしてくれるんだ! あの子は私より幸せにならなきゃいけない子なのに!」
途切れ途切れに足元から吹き出す罵声もまったく気にならずに蹴り続けた。身動きできないからじゃなくて、そうでなかったとしても構わないほどの激情に突き動かされる。
あんなに恐くて、どんな無茶な要求にも委縮して従ってきた相手なのに今は憎しみしか感じない。
「神様に祟られたって自業自得のくせに! 原因の、くせにっ!」
息が乱れてそのうち言葉も出なくなる。暴力に慣れていない手足が疲れで痺れた。もう殴っても蹴っても大して強くはできない。鼻血を垂らす父の顔面を踏みつけにしたのを最後に止まってしまった。
「お前らさえ……来なけりゃよかったのに!」
叩きのめしても気分が晴れるどころか増々怒りが燃え盛った。どれだけケガを負わせたところで許せるはずがない。
そもそも怒る相手が違う。こうなったのは多分山へ入るのを誰かに見られた私のせいで、本来私が反省すべきところなのにその憤りを燃料にしてしまっている。
それでも自分を抑えられない。不毛だろうと道理を無視して感情に任せて責め立てたい。それなのに体がついてこないことが悔しかった。
手足を自由に振るえないなら最後にせめて、倒れる勢いで頭突きを喰らわせてやりたい。そう思って前のめりになろうとしたら、身体が曲がらなかった。腰に何かがしがみ付いている。
見下ろすと、それは神様だった。やけに体が重いわけだ。
「離してください神様。今から神様の仇を取らなきゃなので」
振り払おうとしても蝉のようにしっかりと掴まって離れない。
「馬鹿を申すな、
「そんなこと言ったって神様あんなことになって……あれっ、神様?」
神様は、神様だった。大きくも不気味でもない、元通りの神様。長くて黒い髪と白装束のがはっきり見える。
「もうやめよ! もうよいから、このような者は捨て置くのじゃ!」
ボロボロと涙を流れる顔に覆い被さり抱き締める。
「神様、よかった……!」
「よいものか!
「だって神様が酷いことになってたから……あれ? どうして元に戻ったんですか?」
疑問を感じて顔を離したとき、黒い雫がボタリと神様の顔にかかったのでとっさに手で払い落した。それから、気になって上を見上げると――あの黒くて大きな怪物が木にまとわりついていた。変貌した神様の姿。憎悪の塊。
「神様あいつ嫌い! 聞いて胸の悪くなる嫌なことボソボソ囁きかけてきて、気が付いたらおかしなことになってしもうたのじゃ」
私は神様や祟りに詳しいわけじゃないから正解はわからない。でも直感的に、「逃げなくちゃ」と悟った。もしもあれが祟りの抜け殻なら、きっと神様を求めて動き出す。
素早く神様を抱きかかえて走り出すと、今いた所へ怪物が落ちて来た。悪い予感が当たったと確信してそのまま走り続けようとして、足がもつれて顔面が地面を擦る。
父を殴る蹴るした疲れが響いている。こんなことになるならあんなことしなければよかったと後悔しかない。
「
神様は私を置いて駆け出した。それを追って抜け殻の怪物がすぐそばを通り過ぎる。宿主を取り返すべく私から狙いが逸れた。
怪物が横を通った瞬間、全身を掻きむしりたくなるほどの悪寒に襲われた。
あの塊には人の悪意が詰まっている。「この世を恨め」「人を憎め」と誘いをかけられる。こんなものに関わってはいけないと本能が全身に警告を出した。
でも、ここで怯えてじっとしているわけにはいかない。恐くて我慢しているなんてもうたくさんだから。
「神様、こっちです!」
神社の裏手へ移動すると神様が逆回りに走って来たので抱き上げた。
大きな怪物は動き出せば速いけれど知能は低いのか、神社にぶつかって動きが止まった。かと思うと乗り越えて追って来ようとする。なんとか無事に残っていた屋根の残りが過重に耐えられずにとうとう崩れる。
「ああっ、神様のおうちが!」
「構わんでいいのじゃ! 家も家主も捨て置いて、逃げよ
「それじゃ神様はどうするんですか。山から出られないのに宿なしですよ!」
あれに呑まれて神様がまた化け物になってしまったら祟りが進行する。山が崩れて町ごと祟られる。そんなことの為に逃げているわけじゃないけれど、すぐ麓の学校には出来たばかりの友達がいる。絶対に捕まるわけにはいかない。
でも、どうしたらいいかわからなかった。神様を連れて山の外へは逃げられないから必然的に目指せるのは山頂。ただしその先のプランがない。そこまで逃げられるかどうかすら怪しい。
木々の間を追われて走りながら「もうダメだ」と心の中で悲鳴を上げる。
そんなときに聞こえる声は決まっていた。
「
膝立ちに身を起こした瞳さんが大きく腕を振っている。あんなになってまで私を助けようとしてくれている。
「瞳さん! 改めて今までありがとうございました! でももうダメそうですので、できるだけ離れますけど瞳さんは早く山を下りてください! さっきは酷いこと言ってすみません。私が役目に納得してるって思ってほしかったけど、とにかく私、瞳さんのこと大好きでしたーっ!」
「いいからこっちだってば! うまく狙えるようにおびき寄せてって言ってるのよ!」
後ろを振り向くと怪物の形が変わっていた。手足だけの生き物らしくない異形から、這い寄る上半身、多分男の姿に。
「八木の
「は、ハイっ!」
神様からの指示で方向を変える。
正面にいる瞳さんの姿がまた輝いて目元に朱線が走った。あとはもう何も考えずに走り抜けて、転がりながら瞳さんの懐へ飛び込んだ。
腕の中の神様を庇って仰向けになった視界で、瞳さんが短刀を掲げる。
刀の先が輝き放ち、光線を生んで高く高く伸びる。天を突きそうなほど長い切っ先は雲を割って空に晴れ間が覗いた。
陽光に包まれる中、瞳さんが吠える。
「人の怒りは人へと還り、祟り目は剥がれた! 天地の間から立ち去れ消え去るべき者! 喰らえ――
振り下ろされた光線が地面を叩き、突進して来ていた怪物を打った。光の中で影は散り散りになって消えていく。
「やっと……大昔の惨劇を終わらせられたわね。これで――」
ほほ笑みで私たちを見下ろした瞳さんがバッタリと倒れたので一瞬動転したものの、小さく呼吸が続いているのを確認して私と神様はホッと息を吐いた。
ふと気づくと黒く染まっていた地面が元の色に戻っている。確かに終わったと知って、疲れた顔をする神様を抱き締め私も瞳さんの隣で横になった。
それからすぐ、瞳さんを運んできた例の顔を隠した行列がやって来て瞳さんと私の家族を回収していった。父たちはこの際好きにしてくれていいとして、瞳さんに限ってはそうはいかない。
私はつい警戒したけれど、神様によると神社に色々と物を運び込んだのは彼らだそうで何度もここへ来ていたらしい。瞳さんの同僚なら、と納得することにして任せた。
夜になると預かっておいたスマートフォンに瞳さんの妹さんから連絡が来て、瞳さんが入院したことを聞かされた。骨折はしているけれど深刻な容態ではないらしい。「このくらい何度もあった」「あいつの生命力は厚かましいレベル」と気楽に言われて腹が立ったけれど黙っておいた。
神様の現状についても説明を受けた。
祟りの〝式〟というのは一度聞いたように、この山にいる〝邪な者〟を殲滅する為のもの。その核となったのは昔話に登場する「姫」と呼ばれた庄屋の娘と、生贄を求めた呪術師。瞳さんはそのうち呪術師を払ったらしい。それで呪いは一旦フラットな状態になったそうだ。
瞳さんの一撃でため込んだ怨念は霧散した。と言っても形作る式は残っているから私が〝引き金〟な点は相変わらず。今後の行いと心の持ちようで神様はどんな風にも転ぶと脅かされた。私は神様が再び祟り神に戻らないよう健やかに過ごさなくてはいけないらしい。「
一応気になるのは私の家族。連休初日に私が家に入れなかったのは家族旅行に行っていたからだそうで、「やっぱり」と納得した。旅行から戻れば奴隷の私がいなくて連れ戻そうとしたらこんなことになったのだからきっと怒っているだろうし、また神社へやって来られたら同じことになる。しかも今は瞳さんがいない。
そこで聞いて見ると私の家族はまるごと「本人の意思では戻って来れない所」に送ったと言われた。祟りに関係する〝邪な者〟の定義が私の心象に関係するらしくて、当人たちに改心が見込めないから仕方なくという処置らしい。
個人的にも正直家族に戻って来られたら困るけれど、今すぐ駆けつけて謝罪と奉仕をしなければと言う長年の習性がムズムズするのも本音としてはあった。
以上のような説明を淡々と聞かされると唐突に「それじゃあまた」と告げて通話は一方的に切られた。瞳さんの妹とは思えない冷淡ぶりに唖然とする。
ひょっとして姉の瞳さんに対してもこんな態度なんだろうか。もしそうだとしたら嫉妬と悔しさでかつてないほど胃が荒れてしまう。この人にもこの山には近づかないでほしい。
そのあと、少し途方に暮れた。
神社はとても住めない状態になっていたので無事だった簡易トイレのテントを
夕食は食べなかったけれどなにしろ疲れがあったので翌朝までグッスリ眠れた。制服の土汚れを払って着替え、ビクビクしながら銭湯に寄る。倒壊した神社から掘り起こした荷物の中に回数券が見つかって本当に助かった。
学校へは普通に通った。内心それどころじゃないけれど、瞳さんが守ってくれた日常を自分も守りたかったからそうした。瞳さんが戻って来たときにボロボロのヨレヨレで神社の残骸に引きこもっていたらきっとガッカリされる。
妹さんに瞳さんの様子を聞きたかったので友達にスマートフォンの使い方を聞いて電話をかけたら、どうやら拒否設定をされているらしくて繋がらなかった。仮にも姉の電話番号なのに、ひどいことをすると思う。
瞳さんの妹という奇跡的に幸運な立場をどう考えているのか問い詰めたくなって次に友達のスマートフォンから電話をかけたら一言喋っただけで切られて、同じように着信拒否されてしまった。いつか直接文句を言ってやりたい。
翌日の学校も何事もなく過ぎて突入した土曜のお休み。私は畑の世話をしていた。
食べ物は瞳さんの部屋のドアノブに袋詰めで届けてあった物を食べている。内容はサプリメントや固形の栄養補助食品という素気のない物で、いかにも「補給物資」という趣があることから手配してくれた人物に見当がつく。
なんだか癪だけれどお礼を言おうと思ってもやっぱり電話は繋がらない。何度か試しているうちにスマートフォンは電池が切れてしまった。瞳さんから連絡があるかもしれないのに痛恨のミスだった。月曜になったら友達に充電方法を聞かなくては。
補給物資を神様と分けても食べるには困らないけれど、それでも畑に手を付けたのは畑のおじいちゃんから種芋を分けてもらった恩義を無駄にしたくないのと、何かしていないと不安に捕まってしまうから。
畑のおじいちゃんにはお礼を伝えに行った。家族から解放されたことを知らせると涙ながらに喜んでくれた。本当に心配してくれていたようだ。今どうやって暮らしているかという質問には「なんとかやっています」と曖昧に答えるしかないのが申し訳なかった。
別に隠したいわけじゃない。気がかりが多くて話せなかった。
瞳さんはケガが治ったら戻って来てくれるだろうか。「任務は終わった」ということでもう二度と会ってくれないかもしれない。ほったらかしにされるのも辛いけれど、後任が妹さんだったりしたら泣くに泣けない。
一番重大な問題は神様を私が〝良い神様〟にできるかどうか。本来なら私の手に委ねられるはずもない範囲の事柄で、どう心配していいのかもわからない。
あれ以来神様に変わった様子はない。気になって仕方が無いので度々撫で回してどこかにおかしな所がないか確かめた。神様はそれが嬉しいようでベタベタに懐いてくれるので余計に触りまくることになった。おかげで神社にいる間はほとんど離れていることがない。
家族のこと、瞳さんのこと、神様のこと。どれ一つこの場で解決できないのについ考え込んでしまう。今も水を撒く手が止まってバケツを提げ呆然としてしまっていた。
そもそも今水を撒くのは正しい手順なのか。畑のおじいちゃんに聞いてきちんと教わったほうがいいのだろうけれど、気力が湧かない。
今の私にできることは気を紛らわせながら瞳さんの帰りをじっと待つだけ。瞳さんと同じ髪型にして祈るだけ。
「おおっ、ミミズじゃ。こんなに肥えたミミズがおるとはさずが神様の山……
畑仕事を手伝ってくれていた神様が私の様子に気付いてひっしと抱き付いてきた。
「心配要らぬゆえ気を落とすな。神様がついておる。八木も必ず戻って来る」
私が落ち込んでいると欠かさずこうして励ましてくれるのはありがたい。でも畑の
「我慢せずともよいのじゃ。悲しければすぐに泣け。嫌なことがあったらすぐに怒れ」
神様が握ったままでいたミミズをそっと逃がす。
「ハイ。……でも神様、私が怒ったときは止めたじゃないですか」
「溜め込むゆえ障りがあるのじゃ。限界に至ったゆえああなったのじゃろう? 二度目のないよう早め早めに、頼むから短気を起こしてほしいのじゃ。神様恐かった」
「『恐かった』って、神様がそれを言います? あんな真っ黒でおっきな怪物になって、瞳さんのこともボコボコにするし。私だってあんな風にされたことないですよ」
「
泣いてオロオロと戸惑う様子が可哀想なのにおかしくて、ギュッと抱き締める。
「大丈夫ですよ。怒ってなんかいません。神様の気持ちはわかってますので」
家族には恨まれている。だけど瞳さんは私を大切にしてくれるし、私の為に祟ってくれる神様もいる。初めてできた本当の友達はこれからきっと親しくしてくれて、今度一緒に美容院へ行く約束もした。
それでも我慢できない不満があるとするなら。
「瞳さんに、会いたいなあ……」
つい呟くと、神様の息が耳をくすぐった。
「神のお告げじゃ。『待ち人現る』――後ろを見よ、
まさかと思って振り向くと、本当にいた。瞳さんだ。パジャマのような薄い水色の服で不安定な吊り橋を渡るように木の根を避けながら近づいて来ている。
「瞳さん! けがで入院してるんじゃなかったんですか?」
答えを待つより再会が嬉しくて駆け出す。
瞳さんは汗が浮く顔でぎこちなく笑った。
「治ってはいないけど、気になって気になって傷に障るから自主的に退院したのよ。折れたのがアバラじゃ固定もしようがないし」
「私もう会えないんじゃないかって不安で不安で――えっ、アバラ? 神様ダメッ!」
抱き締め合う感動の再会は中止して踏み留まり、あとをついて来ていた神様がジャンプしたところを空中で捕まえて止めた。折れた肋骨に体当たりが決まる大惨事は危ういところで防げた。
ホッと息を吐く瞳さんのため息が深い。
「察してもらえて助かったわ。電話が通じないし事前に連絡できなかったから死を覚悟して会いに来たのよ。勝手に出てきたから伝言頼むこともできなかったし」
なんて無茶をするんだろうと呆れてしまう。でも、それ以上に嬉しい。心臓がはしゃぐ仔犬みたいに跳ねる。
「瞳さん、会いたかったです」
「私もよ」
ほほ笑む瞳さんが手を伸ばしてきて、「触れようとしている」とわかった。
サッと反射的に後ろへ下がってその手を避ける。
瞳さんは一瞬虚を突かれた顔をしたけれど、すぐに笑顔を戻して前へ出て来る。なのでそれに合わせて動き近付かないよう距離を保つと、瞳さんが「うっ」と呻いた。
「……
泣きそうな顔で私の機嫌を取ろうとしてくれることは嬉しくはあるけれど、身体も辛いだろうからムリはさせたくない。第一、誤解だった。
「怒ってませんよ。そういうことじゃなくてですね……。なんででしょう、急に瞳さんと触れ合うことが照れくさくなったと言いますか……」
今までは寄れば気持ちが安らぎ抱き付けば寿命が延びる想いがしたのに、今はそばにいるだけで少しも落ち着かない。
最初は突然の再会に驚いたからだと思っていた。けれど心臓はずっとドキドキしている。
神様が訳知り顔で頷いた。
「そうかそうか。怒りの次は恥じらいを覚えたのじゃな」
「あばら骨が飛び出してもいいから
瞳さんが虚ろな表情で恐いことを言い出したので抱えた神様を前へ突き出してブロックする。それで正気に戻ってくれたらしい。
それより、と咳払いを挟み真剣な顔つきに変わる。
「
「えっ」
今度は私が動揺する番だった。
「だって家族は遠くに連れて行ったって、それに触れ合わなきゃって、なんで、そんなこと言うんですか……!」
家族が戻って来る。そう考えただけで高揚は消え去り吐き気がこみ上げてきた。
「八木、お主先日のことをもう忘れたか!」
神様が叱り飛ばしても、瞳さんは平静を失わずに首を振る。
「連れて行かれた家族とは別。
「いえ、あのー……母は、母ですので」
何を言われているのかさっぱりわからない。
「
「父と母、それに祖父と祖母です。祖父母は父方のはずです」
「あなたが〝お母さん〟だと思っている人、本当はお父さんの妹よ。つまりあなたにとっては叔母さん」
「……はい?」
言われて見れば、夫婦らしいところは見たことが無かったかもしれない。物心ついた頃には一緒に住んでいて、それらしい年の男女だから勝手に父と母だと思い込んでいた。うちは普通の家庭とは色々と違っているので奇妙に思うこともなかった。
「あー……そう言えば昔『お母さん』って呼んだ時が一番キツく叱られましたねえ……」
まさか『お前なんか娘じゃない』がそのままの意味だとは知らなかった。
「と、言うわけで、あなたのお母さんはちゃんと他にいます」
「えっ。私にお母さんが」
それはそうなのだろうけれど、想像もしなかったことの先の話なのでいちいち驚いてしまう。私に未知の家族がいる。
瞳さんは私の反応を楽しんでいるようだ。悪戯っぽく笑っている。
「元々は神社の管理者として登録されている家系を探していたのよね。こうなった責任を問わなきゃと思って。そうして行き当たった人物が
「なんじゃ、
「ええとですね神様、現代では宮司というのはですね――」
瞳さんが神職に関する講釈を述べている間、私はなんとも言えない心地に浸っていた。
(私の、お母さん。本物の……お母さん?)
ボンヤリしていると、語り終えた瞳さんが控えめに笑った。
「それで、会いたい? 向こうは
存在を知らなかったくらいだから恨みはない。まだ見ぬ母があの家でどういう扱いを受けたのかも想像がつく。直接会いに来れなかった気持ちもわかる。
「あの人は
重ねての問いかけに返事をしなかったのは迷ったからじゃなくて、心の傷がじんわりボヤけていくのを味わっていたかったから。
この先どんなに親愛を得ることがあっても過去は変わらない。私は家族から愛されなかった人間。それが間違いだった。
そうとわかっただけでも私は世界を――幸福を信じられる。
はあ、と息が漏れた。
「神様はいますねえ……」
自分の呟きがいかにも〝しみじみ〟して聞こえたことがおかしくて、つい吹き出して笑った。
「アハハ! アハハハハハ!」
二人が驚いた顔を見合わせ、それから釣られて声を上げ笑う。
空は気持ちの良い快晴。足元を見下ろせばジャガイモが芽を出している。植えて数日での発芽はえらく気が早いので、どうやら早速神様のご利益が活躍しているらしかった。
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