宣言(第五十七回 お題「演じる」)

 可愛い女を演じるのに疲れた。

 もう終わりにしよう。

 彼女がそう言うと、彼はしばらく押し黙った後、静かに目を伏せた。

 「ごめん。言われるまで、君がそう思ってるって全然分かんなかった。

 ごめん。ほんとにごめん。無理をさせてごめん。

 君の希望どおり、終わりにしよう。いまここで…痛っ」

 彼の頭をはたいた手をさすりながら、彼女はいらいらと口をはさんだ。

 「人の話は最後まで聞きなさい。アイドルやめるのは、ネコかぶってオンナノコやるのがしんどくて限界だからってのもあるけど、『商品』でいたらアンタが手ぇ出してくんないからだから」

 彼は、腰を浮かせて見下ろしてくる彼女をぽかんと見上げていたが、じきに満面の笑顔になった。

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