Twitter300字ss参加作品(2019年~2022年)

虚影庵

2022年

卒業式(第八十五回 お題「紙」)

 記載された日時が過ぎたから、これはただの紙きれになった。

 見慣れた名前と見知らぬ名前が並んだ結婚披露パーティーの招待状の、文面をもう一度眺めてから手をかける。

 家のプリンタで印刷したらしいその紙は薄く、簡単にびりびりと裂ける。親指の爪くらいに砕いてから、両手ですくい上げて降らせてみる。

 ひとりで祝う、終わった恋からの卒業式。

 涙は出なかった。

 こんなにドライに片付けられるのなら、届いたその日に捨てておけばよかった。そう思ったらなぜか視界が歪んだ。

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