初志貫徹(第八十六回 お題「買う」)

 小さい頃から彼はケチだった。

 同級生たちがおやつやゲームにおこづかいを注ぎ込むなか、ひとりだけ貯金が楽しいと言って貯金通帳を眺めている子供だった。

 成長してもあいかわらずで、それどころか投資を覚えてさらに金を増やすことにのめりこんでいった。

 家族も持たずに老年を迎えた頃、彼は全財産をほぼ使い切る買い物をした。

 発見されたばかりの、複数の惑星を持つ銀河の所有権を購入し、自分の名前を付けたのだ。

 子供の頃からずっとこれが欲しかったのだと、インタビューに答える彼の笑顔は少年のようだった。

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