困った人たち(第六十五回 お題「鍵」)

 ドアノブがすんなり回る。

 鍵かけないで、オレみたいなコソ泥に入られるほうが悪い。

 ドアを開けて、さっさと中に入る。

 「泥棒さん! ありがとう!」

 入るなり、本物の住人らしいヤツが、むちゃくちゃ嬉しそうな顔をしてそう言った。

 「自分、借金しすぎて死のうとしてたんです! 財布に1円玉はあるんで、自分殺してあれ持ってってください!」

 「なんでオレがお前を殺んなきゃならねえんだ!」

 「泥棒さんはお金欲しくて、自分は殺してほしい。Win-Winじゃないですか!」

 「断わる!」

 でかい声で言い合ってたら、誰かが110番したらしい。駆けつけてきたおまわりに、二人ともがっつり怒られた。

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