今日も、雨(第五十四回 お題「雨」)
僕は機械的に傘を差す。
もう、降り続く雨をうっとうしいと思う気持ちはない。
顔を洗って、髭を剃るのと同じ、機械的な動きだ。
傘に雨粒が当たる音で、車の走る音さえも聞こえづらい。これもいつものことだ。
僕は傘越しに空を見上げた。
雲ひとつない、真っ青な夏の空が広がっている。
前から歩いてくる人たちが、僕を見て、ぎょっとした顔をしたり、目をそらせたり、見なかったような顔をして、僕を避けるように通り過ぎてゆく。
背後で、小さい子が「あのお兄ちゃん、ヘン」という声もする。
あれもこれも、もう慣れた。
僕の父親が、水神のお膝元だという水源地を埋め立てるプロジェクトに関わってから、僕たち家族の回りだけずっと雨が降っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます