2019年
薬師の仕事(第五十回 お題「薬」)
その薬師は、どんな処方を求められても断ることなく薬草を煎じた。いかなる薬も、いかなる毒も、へだてなく煎じた。
なぜ毒をも煎じるのか、悪人の手先になるのかと詰られても、「毒という薬草はございません」と淡々と答えるだけであった。
ある時、薬師の渡した毒が貴人の謀殺に使われたとして、薬師は役人に連行された。
裁決の場で、薬師は君主の前で巻物を開いてみせた。そこには、今までに薬師が毒となりうる薬草を渡した者たちの訪問日と風体、渡した薬草の種類が細やかに記録されていた。
毒を用いて他者を害したとして、膨大な数の人間が罪に問われ、それらの決裁がひととおり終わるまで、ひどく時間がかかったそうである。
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