第8話 下半身
Kさんの好みを知らない俺は、ホワイトデー前の週末にデパートへ行った。ネット通販ばかり利用しているから慣れない人混みにうんざりしつつ、女性が好みそうなキャラメルを買った。その年のホワイトデーは水曜日、さて、どうやって渡そうか。
当日、目立たぬよう社内用のバッグに忍ばせ、いつもより少し早めに総務課へ行った。会議の前や発表の前には何度もズボンのチャックを確認してしまう、俺の緊張した時の癖が出る。下半身を触ってるんじゃない、トイレが近くなるからチャックを閉め忘れてないか、心配になってしまうんだ!ドアの前でまたチャックを触っていると、最悪のタイミングで、Kさんが俺の横に居た。
「お疲れ様です」
よりドアに近い俺が開けるのを待っているKさん。今なら廊下に2人きりだけど、こんなに緊張する場面など記憶になく、プレゼントの話題を切り出すこと無く、取っ手を回し、何事も無かったかのように雑用を済ませた。渡せない、言い訳などもちろん出来ない。仕方が無い、部署に戻ったら誰かに渡そう。
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