第11話 性癖

読み返してみたのだが、俺の妄想やマスターベーションに耽るところなど聞かされたって気持ち悪いと思う。すまぬ。結論を言ってしまうと、俺はこのデートで、以前から知っていたことをKさんに告げたんだ。よくそんなタイミングがきたなと思うけど、会話はどうしても興味のあることに進んでしまうものだ。言ってしまった後、Kさんの反応が遅れ、俺は、口が滑った!ヤバい!と思ったが、少し間があいた後にKさんは俺の目を見つめ、ゆっくりとした口調で言った。


「それは、あなたの趣味嗜好を私に知られたかったと、解釈して良いのでしょうか。」


 適度な距離を保っていたKさんが、気付くと俺の顔のすぐ前に、キレイな顔を寄せてきた。身体に軽く手を触れられ、俺はたじろいでしまった。夜の上野公園だった。恋人のように手を握るのではなく、Kさんの手に手を触れられ、俺の全部の感覚が手に集まってしまったような感覚。控え目だったKさんが、突如、積極的になり、もうこれ以上抑えることは出来ない!と、俺はKさんを抱きしめてしまった。


「どうしたいの?・・・・・どうされたいの?」


耳元で囁く。俺は彼女の手をつかみ、早足でホテル街に歩こうとした。


「待って。」


待てない!と思ったが、俺は残っていた理性を掻き集めて立ち止まった。距離は相変わらず、他人ではない位置に居てくれる。


「あなたのことを聞かせて。」


何もかも知り尽くしているような艶かしい視線を向けられた俺は、自分の性癖を彼女に話していた。










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