第12話 興奮
「どのシーンで抜いたんですか?」
Kさんがストレートに聞いてきた。まあ、俺がAVを観ていることが前提だったし、あの時は気持ちが高ぶっていて、あまり回りくどく言われても冷めるだけだったろう。
・・・1度目は、もしかしてKさんでは無いかと思った後は、色んなシーンで抜きました。
「ふふ、どの作品がお好きでしたか?」
・・・今では、どれも好きです。
「一番に買った作品は?」
・・・スカトロです。
「匂いを嗅いだことはありますか?」
・・・まだ-。
「触ったことは?」
・・・それもまだ-。
「恥ずかしがる私と、押し付ける私と、どちらがお好き?」
・・・・・・・・。
黙ってしまった俺の手を、Kさんの指がなぞった。全部の神経が手に集まったかのように錯覚して、ゾクッとする。キレイに整った爪がスッと滑る。余韻に興奮している俺の手を、いつの間にか握り直しチュッと音を立てながら、Kさんの唇が俺の指の腹を吸う。弄ぶKさんの所作に魅せられる。これは、もちろんOKってことだよな、妄想が止まらない!
「今日はありがとうございました」
さっきまであんなに近くに居たのに、いつの間にか会社での俺とKさんの距離に戻っている。微笑む彼女が離れていくことに動揺し、何が起こったのかわからないまま、彼女をまだまだ離したくないのに、嫌われることを恐れた俺は、送りますと言って、駅へ向かった。
改札を抜けたKさんを見届けたのに、彼女は振り返り、いつまでも俺を見ている。
彼女と過ごすことを期待して5分くらい経過した後、Kさんは俺に軽く手を振り背を向けて歩き出した。俺も改札に背を向けたらメールが入った。
「一緒に過ごす夜を楽しみにして良いですか?」
俺は考えるより先に、小走りでKさんの通った改札の中に入った。だが、すぐそこに居たはずの彼女を捕まえることは出来なかった。
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