第6話 密室

忙しかった年末も終わり、新しい年を迎えた。


仕事始め、今日も午後15時に総務課へ行く。


普段は座って作業しているKさんだが、その日はミニスカートで黒いパンストを履いた脚が見えた。やっぱりキレイなんだな。


脚から腰、顔を上げると、Kさんが俺を見ている。


目が合った直後、数秒ほど止まってしまった俺から、目をそらさなかったKさん。まるで妄想に耽る俺の心の中を見透しているようだ。


また別の日、この日もKさんはミニスカートで立っていた。防寒具をつけていたので足首が見えず残念。


Kさんは、縦縞模様の入った黒パンストを履いていた。彼女と目が合うのを恐れた俺は、早々に総務課から立ち去った。


次の日。ドアを開けるとまたKさんと目が合った。軽く口元を開けて微笑むKさんの歯は、とても印象的だった。


Kさんの出演しているAVを、 穴が開くほど見た俺は、笑った顔が1番可愛いことを知っている。


しかし、リアルで俺に向けられた笑顔など、ほとんど見たことが無い。いつも事務的だった。


カウンター越しのKさんと目が合い、声をかけられた。


「お疲れ様です。」


よく透るKさんの声に対して、俺は返事をすることが出来なかった。


総務課のドアを開け、廊下へ小走りに出てしまう。ガッカリしたような、ホッとしたような。


1人になった俺は、またKさんを思い浮かべる。


Kさんの雰囲気は、AV、それもスカトロ女優とはいえ、セクシータイプではない。


SMのイメージとはかけ離れていて、とても清楚な感じがする。


ふと、俺の部署のある棟で、コートを着たKさんがエレベーターを待っていた。更衣室から出てきたようだ。いや、隣のトイレからか?


前回とは違う職員専用のエレベーターは、人が少ない。二人きりになる可能性が高い!


この俺の妄想を、少しでも話せば、ハラスメント!ハラスメント!解雇解雇解雇のシュウリンガンだ。先日の同僚との飲みの台詞を拝借。


恐れていたこと、いや、期待していたことが現実になる。


エレベーター前に2人きり、相変わらずお互い無言。ちょっと気まずいけどすぐ終わる。


Kさんと、トイレ。


便器になりたい… Kさんのコロッとした、あのモノを、口の中に押し込められたい…


俺とKさん、エレベーターにはやっぱり二人きりとなった。


キタヨこれ!一秒が何時間も!ってパターンか。


勃つから気まずいのか、妄想するから気まずいのか。少年誌恋愛系なら、意識って言い回しかもしれない。


30男なんて、こんなモン。これがリアル。笑


ドアが閉まると、在ろう事か、Kさんが俺に、落ち着いた様子で話しかけてきた。


「~について、教えていただけたら嬉しいのですが。」


まさか、彼女から話しかけられるとは…!


彼女の質問の内容は、俺の専門職の内容だから、もちろん詳しい。でもどうやって彼女に説明しようか。


「専門では無いので、私の理解力では心配もあります。どのように学んだら良いか分からなくて」


Kさん、無知どころか鞭がお得意だろ!

縄も言葉も達者だろ!俺、知ってるんだぞ!


そんな、返しを考えたのは家に帰ってからのこと。


その時の俺に余裕など無く、初めて会話した時の言葉が、そのまま出てしまった。


・・・何で、俺に?


少し、間があった。長いと言うほどではない。


Kさんは俺を見つめ、少し伸ばせばすぐ手が届くような距離まで、俺に近づいてきた。


「ご迷惑でしたね、ごめんなさい」


エレベーターが止まり、Kさんは俺に会釈し立ち去ってしまった。


彼女と関わるべきか?


答えるべきか、教えるべきか、悩んでしまった。


遠くで妄想してるほうが、楽で、楽しかったんじゃ無いか?


俺を悩ませ、振り回す彼女。


おまえ、便器以上の、なんだって言うの…?笑


キスをしたい、なんて。夢物語も大概にしなさい…


俺の唇に息を吹きかけ、チュパッ、チュパッ、と音を立てるKさん。


ああ、あのシーンだ…


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