大切さについて考えてしまいます

 迫力のある戦闘と、緩い日常が交互に来る――といえば、よくある現代ファンタジーなのですが、本作はその割合が絶妙であると感じます。

 どちらが欠けても物語が成立せず、戦闘の合間に日常があるのでも、日常の合間に戦闘があるのでもないからです。

 描かれているのは、シーンやパートではなく、常に人間関係で、複雑ではないからこそ深くなっていると感じました。

 死ぬ訳ではないという描写がありつつも、それが緊張感を緩める訳ではないのは、そこにこそ秘訣があるように思います。

 一分であろうと一秒であろうと、切り取られてはならない記憶や時間があり、それがどれだけ貴重であるか描いているからこそ、「大切さ」というものを考えさせられました。

 さて、読んだ方の記憶は、どうですか?

 抜け落ちてしまったものはないですか?