第9話 冬の街は本当はミカと歩きたかった
冬の街をキミエと歩く。
雪が降りそうで降らない曇った空。
手を繋いでいて、そこに本当の恋はあるのか?
俺はミカの笑顔を忘れたくない。
けれども、今、手を繋いでいる相手はキミエ。
もう涙を流さないように、ミカの笑顔をそっと心の奥底にしまう。
キミエは鼻歌を歌う。
俺はもう会えないミカの未来を心の中に祈る。
「ねぇ? 私ってロリータの趣味だけど、本当に私でいいの?」
俺はキミエの顔を見る。
本当にこの人でいいのか。
俺は小さな声でこう言った。
「それがどうした? 俺は気にしない」
キミエは質問を続ける。
「私の何がよかったの?」
俺は笑ってこう答えた。
「好きになるのに、理由なんていらないだろ?」
それを聞いたキミエは自然な笑顔を見せた。
俺は心にもないことを言った。
ミカを忘れたくない。
キミエがそんなことを知る時はないのだろう。
キミエが握る手に力をギュッと入れた。
悲しいよ。
俺は俺じゃない。
ミカの手を振りほどこうとしたあの時から。
(続く)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます