第9話 冬の街は本当はミカと歩きたかった

 冬の街をキミエと歩く。

 雪が降りそうで降らない曇った空。

 手を繋いでいて、そこに本当の恋はあるのか?

 俺はミカの笑顔を忘れたくない。

 けれども、今、手を繋いでいる相手はキミエ。

 もう涙を流さないように、ミカの笑顔をそっと心の奥底にしまう。

 キミエは鼻歌を歌う。

 俺はもう会えないミカの未来を心の中に祈る。

「ねぇ? 私ってロリータの趣味だけど、本当に私でいいの?」

 俺はキミエの顔を見る。

 本当にこの人でいいのか。

 俺は小さな声でこう言った。

「それがどうした? 俺は気にしない」

 キミエは質問を続ける。

「私の何がよかったの?」

 俺は笑ってこう答えた。

「好きになるのに、理由なんていらないだろ?」

 それを聞いたキミエは自然な笑顔を見せた。

 俺は心にもないことを言った。

 ミカを忘れたくない。

 キミエがそんなことを知る時はないのだろう。

 キミエが握る手に力をギュッと入れた。

 悲しいよ。

 俺は俺じゃない。

 ミカの手を振りほどこうとしたあの時から。



(続く)

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