第5話 夏も終わりそう
後日、トモヨには涙の理由を素直に話した。
カフェでお互いにアイスコーヒーを飲む。
どうして? どうして俺はミカを突き放したんだ?
俺はもう戻って来ないミカを思った。
「ねぇ? おかしくない?」トモヨはやはりイライラしているようだ。
俺は何も言えない。
「それって、あなたが悪いんじゃないの?」
その通りだ。
「先にふっておいて、やっぱりナシでした! ありえなくない?」
そうだよ。俺はバカだ。
「ごめんだけど、私なら殴る」
「なぁ? それぐらいにしてくれ」
「は? 反省しているの? 殴る、ってか、私はあなたと別れるよ」
そう言ってトモヨは席を立ちこう言った。
「バカでしょ? あなたって」
立ち去って行くトモヨ。
俺は何も言えなかった。
悔しい、でもそれが本当の話。
俺はまたひとりになった。
夏も終わりそう、セミの鳴き声もどこか弱々しい。
ミカはまだ入院しているのだろうか?
俺はスマホを取り出し、ミカとのプリクラの写真を見つめる。
なんで教えてくれなかったんだよ……。
わからなかった自分を責める。
ミカの苦しみをわからなかった自分を責める。
最後にミカの手を振りほどこうとした俺は……。
ミカの電話番号を開いて、いろんな感情が俺を突き刺す。
もう遅い。
もう戻って来ない。
もう会えない。
俺はそれでもミカの電話番号を消せなかった。
セミが鳴き止んだ。
俺の夏も鳴り止んだ。
俺はもうどうしたらいいのだろう。
(続く)
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