第10話 俺の誕生日の目前
キミエがココアを飲んで急にこう言った。
「きっと、あなたには大切な人がいるから」
キミエは席を立とうとする。
「待ってくれ! どうしたんだ?」
キミエの目は涙を見せた。
「今まで、ありがとう」
キミエに何かしたのか、俺は?
一瞬だけ考えて心当たりはない。
「頼むから行かないでくれ」
俺は情けないぐらいの声色で言う。
するとキミエは背中を向けてこう答えた。
「本当に一緒になりたい人と結ばれてね」
そ、そんな……。
キミエはカフェをあとにして去った。
ひとり残された俺は頭の中が真っ白になる。
もう終わりだ。
この一年間は終わったんだ。
俺も席を離れる。
ひとり寒空の下、帰宅する。
ミカ、思い出の中の彼女は笑顔だ。
でも、俺は、ミカに、なんてことを。
力が一気に抜けて布団に倒れ込む。
俺はバカだ。
誰からも相手にされない。
俺はひとりぼっちの俺を笑う。
全て終わった。
何もかも。
(続く)
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