第11話 俺という存在のもう半分は

 俺という存在の半分はきっと失恋なんだろう。

 体の力が抜けていく。

 けれども、それは0になることはなくて。

 つらいけど生きるしか方法はなくて。

 俺の存在理由なんてとっくになくて。

 俺という存在の半分はきっと失恋なんだろう。

 もう半分は、もう居ないミカへの涙。

 ごめんなさい、ミカ。本当に悪いことをした。だから俺は今、ひとりぼっちなんだ。ミカ、君のリストカットなんて今では気にしない。でも、それは今では言い訳でしかなくて。

 俺は部屋でひとり泣く。

 となりに居てくれた女性たちも居ない。

 もう二度と会えない彼女たち。

 今さら後悔しても遅い。

 ミカ、ミカ、君の苦しみを知ることは二度とないのだろう。

 俺という存在の半分はきっと失恋なんだろう。

 もう会えないミカへの涙をせめてものの記憶の奥底に沈めたい。

 ……………………………。

 待ってくれ。

 最後にもう一度だけ確かめたい。

 俺はミカの友だちにメッセージでこう送った。

 ミカに会いたい、と。

 わかっている。

 こんな俺に会う権利も資格もないって。

 俺は涙を一生分のように流した。



(続く)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る