第3話 二つ目の日差しは夏だった
マンガを読み漁る毎日。
冷房の効いた俺の部屋。
となりには難しそうな小説を読む彼女。
何を読んでいるのだろう?
トモヨはひとつ下の十八歳。
いわゆる、文系ってやつらしい。
セミが鳴き止んだ。
「小説を読んでみない?」
「いや、いいよ」
トモヨは小説を閉じて俺にこう言った。
「マンガは何を読んでいるの?」
「読む?」
「読まない」
セミが鳴いている。
彼女が俺をじっと見つめるのを俺は横目で知っている。
「何か?」俺もマンガを閉じた。
「ねぇ? 文豪ってわかる?」
「何それ?」俺は興味がない。
ここで彼女と正面同士で顔が向き合う俺。
「読んでみない? 損はしないって思うよ?」
トモヨは真面目にそう言う。
「それよりも、外に出ようぜ?」
彼女が不満そうな表情をする。
「わかった……。でも、あとで小説を読んでね?」
「イヤ」
不機嫌なトモヨを連れて俺は本屋を探した。
トモヨが本屋に行きたいとうるさいから。
結局は街に到着した。
それから古本屋にトモヨが向かう。
俺の手を引っ張りながら。
あ、店内が冷房をつけていないから古本の匂いがする。なんて言うか、ホコリっぽい匂い? トモヨにとっては、慣れた匂いなんだろうけど。
てか、暑い。
「ねぇ? もしも私が古本を積み上げてその上に何か置くとしたら、なんだと思う?」
「え? どういう意味?」俺にはさっぱりわからなかった。
なぜか、トモヨは笑顔で鼻歌をしながら何かの古本を探している。
「正解はクマのぬいぐるみ!」
俺にトモヨを理解できる日は来るのだろうか?
(続く)
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